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赤テントに懸けるPart2(1)請井克成さん 身軽さ生かし伝統芸守る

「ふすま回し」の練習に励む請井さん。失敗のトラウマを厳しい練習によって克服した
「ふすま回し」の練習に励む請井さん。失敗のトラウマを厳しい練習によって克服した
 120年続く木下サーカスは多くのスターを生んできた。Part2では、伝統の赤テントを今支えている中核・ベテラン団員を紹介する。

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 身長163センチ、体重45キロ。2012年入団の請井克成さん(33)は男性団員の中では小柄で、あまりいないタイプの痩せ形だが、それを生かした演目を担い、木下サーカスにいなくてはならない存在だ。

 あおむけの態勢で足裏にふすまの形をした板を載せ、自在に操る伝統芸「ふすま回し」をはじめ、斜めに張られた麻縄を歩いて上る「坂綱」、天井近くの鉄棒に立ち、大車輪のように回転する「パイプレット」を担当。いずれも身軽さと優れたバランス感覚があればこその演技だという。

 愛知県岡崎市出身。大学時代、サークルで始めたジャグリングに熱中し、地域のイベントなどに出演、観客の前で演技する楽しさに目覚めた。大学卒業後は、ジャグリングを極めようと、木下サーカスの門をたたいた。

 しかし、入ってみると、団員たちは複数の演目を掛け持ちしており、ジャグリングだけでは難しいと感じた。体操経験もない自分に何ができるか。先輩から勧められたのがパイプレットで、体重が軽い方が脚への負担が少なく、けがをしにくいとの理由だった。

 パイプレットは入団2年目でデビュー。その次には坂綱に挑戦。もともと得意だったジャグリングも含め、順調に三つの演目で出演を果たし、自らの可能性を広げていった。

 「サーカスの魅力は団員たちのさまざまな個性でつくられていると知った。自分に合う演目を見つけるのが楽しかった」

 ただ、ふすま回しでは大きな壁にぶつかった。2年で演技をほぼできるようになったが、舞台デビューを懸けた木下唯志社長や幹部の前での演技でミスをしてしまった。

 「それがトラウマになった」。ふすまを足に載せると、震えが止まらなくなった。それからデビューを懸けた演技に挑戦するたび失敗が続いた。

 転機は新型コロナウイルス禍での公演休止だ。空いた時間、本番同様の衣装を着て練習を繰り返した。「絶対失敗しない自信を付けるしかない」。20年の愛知県豊川市での公演でようやく舞台を踏んだ。最初の練習開始から5年がたっていた。

 今も本番前は毎回、プレッシャーを感じるが、「足が震えても板を落とさないまでになった」という。自らの個性を徹底的に磨き、伝統芸を守っていく。

(2022年08月11日 19時03分 更新)

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