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地域交通の危機 国政としてもっと議論を

 朝夕は高校生らで列車が満員状態の路線でも、廃線になるかもしれない―。

 そんな危機に今、地方が直面している。JR西日本が4月、利用が少ないローカル線の収支を初めて公表した。1キロ当たりの1日の平均乗客数(輸送密度)が2千人未満の路線が対象だ。といっても朝夕には乗客がかなり多く混雑するケースも少なくない。

 廃線になれば高校への通学に支障が大きい。バスに転換するにしても多くの車両が必要で運転手を確保できるのか不明だ。通学しにくくなれば地域の高校の存続も危うい。高校がなくなれば定住や移住する人が減り、地域が衰退する。そんな不安が拭えない。

 該当するのは、JR岡山支社管内の姫新、因美、芸備線を含む17路線30区間だ。在来線距離の3割にも及ぶ。JR西は自社だけでは維持が難しいとして、沿線自治体に路線の在り方を協議する場の設置を求めている。これに対して自治体側からは困惑や反発の声が広がっている。

 JR東日本も同様の動きを見せているほか、JR四国やJR北海道もかなり厳しい経営状況に直面している。

 過疎地の路線だけでなく、岡山市など都市部を発着する路線でも減便や無人駅化などのサービス低下が著しい。鉄道だけでなく、バス路線の廃止や縮小、コミュニティーバスが維持できず予約型乗り合いタクシーで代替するといった地域交通の衰退が顕著だ。

 全国的に暮らしへの影響は大きいが、参院選で主な政党が前面に押し出している公約には、地域交通問題はほとんど見当たらない。自民党が「国が主体的に協議の場を設け、交通事業者と地域の官民共創などによる地域交通ネットワークの再構築を図る」、立憲民主党が「地域公共交通を支援」としているぐらいだ。

 多くの党で政策集などには地域交通維持に触れた記述はあるものの、困難な状況にある地方との認識のずれは大きいと言わざるをえない。

 今のJR問題は、国が進めた国有鉄道の分割民営化(1987年)に関係する。人口減少などの状況変化で、想定していたローカル線を維持する仕組みが行き詰まった形だ。国が関与して新しい仕組みをつくるのが当然である。

 公共交通が細ると、車への依存が増えて地球温暖化対策に逆行する。観光振興や地方創生にも反して、地域活性化のための政策費用が別途かかる。高齢ドライバーの運転免許返納も困難になる。国が進める他の政策にも支障が大きくなるのは確かだ。

 道路には多額の公費が充てられるのに対して公共交通には少ない、といった偏りの問題も指摘される。単独の路線などの採算性だけを見るのではなく、社会全体への相乗効果や地域づくりの視点を持って交通政策を強化すべき時だろう。各党は国政の重要な課題として受け止め、もっと議論を深めてほしい。

(2022年07月05日 08時00分 更新)

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