山陽新聞デジタル|さんデジ

カジノ誘致 本当に必要な施設なのか

 新型コロナウイルス禍で訪日客を巡る環境は大きく変わっている。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、国や政府は施策そのものの妥当性や必要性を改めて検討すべきだ。

 大阪府・市と、長崎県がそれぞれIRの区域整備計画を国土交通省に提出し、受理された。国交省の有識者委員会が計画を審査し、それぞれ認定の可否を決めるという。

 国は最大3枠を認定する方針だったのに対し、IR誘致を検討していた北海道、千葉市、横浜市はこれまでに見送りを表明した。和歌山県も先月、県議会が関連議案を否決し事実上断念した結果、立候補は2地域にとどまった。

 カジノを巡っては、コロナ禍で収益の確保を疑問視する声や、ギャンブル依存症を誘発するなどの懸念が根強い。立候補した地域の数が、国の想定した枠を下回ったのも、地域住民の強い不安や心配の表れと言えよう。

 IRはカジノや国際会議場、ホテル、商業施設などが一体となった複合施設だ。2018年7月に安倍晋三政権がカジノを解禁するIR整備法を成立させた。訪日外国人旅行者を呼び込み、地域経済の活性化につなげる「成長戦略の目玉」に位置付け、誘致する自治体を募ってきた。

 大阪府・市では、湾岸部の人工島・夢洲(ゆめしま)に整備する。国内外からの年間来場者数は2千万人、経済波及効果は近畿圏で年間約1兆1400億円を見込み、29年秋~冬の開業を予定している。

 長崎県では、佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス」の敷地に造る。年間来場者数は840万人、県内の経済波及効果は年間約3300億円を見込む。開業予定は27年秋ごろだ。

 ただ、これら立候補地でも住民らの反対や懸念の声が相次いでいる。

 大阪では、市が夢洲の液状化など土壌対策費として約790億円を負担する。だが、過去に市が同様の対策費を負担した例はなく、公費の支出に反発する声もある。長崎では、県が資金調達のめどが立ったと説明しているものの、資金を拠出する具体的な金融機関や企業名については、企業側からの意向があるとして非公表のままだ。

 IR整備法が誘致自治体に開催を義務付けている公聴会では計91人が和歌山、大阪、長崎で意見を述べたが、3地域とも反対多数だった。コロナ収束が見通せない中、「カジノは衰退産業」などと経済効果や収益性への疑問が目立ったほか、ギャンブル依存症対策としての入場制限について「効果は限定的」と指摘する声もあった。

 多くの懸念が噴出しており、国が審査基準とする「地域の十分な合意形成」には程遠い状況と言わざるを得ない。住民から十分な理解を得られないようなIR施策は凍結や廃止を含め、根本から見直さねばならない。

(2022年05月12日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ