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桃太郎が結婚、その後お殿様に? 吉備中央の民話、立石さん絵本に

吉備中央町の民話を基にした絵本「ももたろう」を手にする立石さん。力自慢でお姫様と結婚するなど、珍しい展開だ
吉備中央町の民話を基にした絵本「ももたろう」を手にする立石さん。力自慢でお姫様と結婚するなど、珍しい展開だ
 岡山民俗学会名誉理事長の立石憲利さん(84)=総社市=が、岡山県吉備中央町の古老から聞き取った昔話を基にした絵本「ももたろう」(同町教育委員会刊)を出版した。鬼を改心させた功績でお姫様と結婚、後に殿様になる物語。長年、民話に携わる立石さんが「初めて聞いた」と驚く珍しい展開だ。

 立石さんは2014~16年、同町のお年寄りから多数の民話を採録した。その中で一般に知られる内容と大きく異なっていたのが、片山光男さん(1921~2018年)が語る桃太郎だった。

 力自慢の若者に成長した桃太郎は、木を担いで川に橋を架けたり田んぼの大岩を片付けたりして人々を助けていた。村を荒らす鬼を懲らしめるため、犬、猿、キジと共に鬼ケ島へ行き、あっという間に退治。家来にした鬼たちと島を陸まで押して入り江を作り、鬼は漁師になって働いた。喜んだ殿様は娘とめあわせ、桃太郎が殿様になると国はますます栄えたという。

 立石さんが着目するのは結末部分。通常は鬼を倒し、宝物を手に入れてめでたしめでたし―となるが、吉備中央町版は殿様の娘と結婚する。全国で約700話が採録されている桃太郎の民話の中でも「結婚する話は例がない」と話す。

 もう一つの特徴は、大木で橋を架けたり、鬼ケ島を動かして入り江を作ったりと、怪力を世に役立てる点。県内には大きな戸で川の流れを変えて村を洪水から救った真庭市の「大清左(おおせいざ)」、1日に100枚の田を開墾した美作市の「田渕の久三」ら、村のために働く力持ちの伝承がいくつもあり、「これらの影響を受けているのでは」と推察する。

 独自の桃太郎は豊かな文化の証し。立石さんは「絵本を通し、地域に誇りと愛着を持ってほしい」と願う。

 絵本「ももたろう」は吉備中央町のむかしばなしシリーズとして「大和神社の爪なし竜」と同時刊行。千円。同町教委事務局とかもがわ図書館、ロマン高原かよう図書館で販売しているほか、県内の図書館で閲覧できる。

(2022年05月04日 18時05分 更新)

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