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ローカル線の行方 運行の新たな仕組み必要

 身近な鉄道路線が廃止されるかもしれない―。そんな危機感が沿線の自治体や住民に高まっている。

 JR西日本が、利用者の少ないローカル線(17路線30区間)の収支を初めて公表した。1日の平均乗客数(輸送密度)が2千人未満の線区が対象で、在来線総距離の約3割にも及ぶ。岡山支社管内(岡山県、広島県東部など)の姫新、因美、芸備の3路線6区間も含まれている。

 過疎地域や山間部など条件が不利な地方の鉄道であり、当然ながら全線区が赤字で、費用に対する運輸収入の割合(収支率)がおおむね2割以下などと低かった。JR西としては経営状況の厳しさを示して、沿線自治体と存廃を含めた運営の在り方の協議を加速したい考えだ。バスへの転換や、線路などの保有と運営主体を別にする「上下分離」などを視野に入れている。

 これに対して自治体側は路線維持を求める声が強い。「国鉄がJRに分割民営化された時に、赤字路線を含めて維持することが了解されていた」「一部の線区を切り取って赤字を問題視するのでなく、全体像を示して考えるべきだ」といった意見が出ている。

 いずれにせよ、今後の鉄道をどうしていくか自治体などとの協議は必要だ。輸送密度2千人以上の線区も含めて現状のままでは、人口減少などによる利用減、採算悪化による減便などの利便性低下、さらなる利用減―という「負の連鎖」に陥ってしまう。

 新幹線や大都市圏の鉄道の収益を充てる「内部補助」でローカル線を維持するのが、国の国鉄改革に伴うJR発足からの枠組みだった。時代状況が変わり立ち行かなくなったなら、代替する新たな仕組みが必要だ。JRと自治体が協議するだけでなく、国が制度づくりなどで関与するのが当然である。線路などの基盤部分に補助金を出すといった手法が考えられよう。

 今回公表されたデータから浮かび上がったのは、収支率の低さだ。輸送密度が同程度の他の民間鉄道(第三セクターを含む)と比べて収入の割にコストがかかっていて、明らかに違いが大きいことが研究者から指摘されている。JR西は、管理費を除外するなど「一定の前提をおいた算出」としており、詳細は不明であるものの、大まかな傾向としては実態を反映していると思われる。

 実際、他の鉄道では輸送密度2千人未満でも黒字であったり、赤字でも距離当たりで少額にとどまっていたりする。運行本数は比較的多く、サービス水準を上げて乗客数が伸びたケースもままある。鉄道の可能性を引き出すための運行改善や経営の工夫が、今後の協議で求められる。

 鉄道事業者の経営効率化は目的ではない。あくまでも地域の利益向上のため、国や自治体、JR西などが役割分担して便利な公共交通の確保を目指さねばならない。

(2022年04月17日 08時00分 更新)

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