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イラン核合意 自制しつつ妥協点を探れ

 核合意の立て直しに向けた米国とイランの間接協議が約5カ月ぶりに再開した。8月にイランで反米保守強硬派のライシ政権が発足してから初めてで、合意当事国の英仏独中ロと仲介役の欧州連合(EU)も参加した。

 イランが加速させている核開発の行方に係る重要な交渉だ。協議決裂という最悪の事態は避けたものの、交渉を続けること以外は主張が大きく隔たり、次回会合の日程も正式に決まっていない。

 核合意が崩壊すれば、イランが核兵器を手にし、世界全体が脅威にさらされかねない。機能不全に陥った現状を打開することが急がれる。

 核合意はこうした危機を防ぐため、主要6カ国とイランで2015年に結んだ。イランが核開発を抑制する代わりに、米欧がイランに科してきた制裁を解除する内容だ。

 しかし、18年にトランプ前米政権が一方的に離脱し制裁を再発動した。経済に大打撃を受けたイランは対抗措置として核合意が定める制限を次々と破っている。ウランの濃縮度を兵器級に近い60%にまで引き上げ、蓄積量も増やした。国際原子力機関(IAEA)による査察にも十分には応じていない。

 もともと核合意は万が一、イランが核武装を宣言しても必要な核燃料を製造するのに1年はかかるよう設計されたという。だがイランの核開発はかつてない水準まで進んでおり、数週間で作る技術を得たとの見方もある。事態がより深刻化するのを避けねばならない。

 核合意の修復を目指す間接協議はバイデン米政権発足後の4月に穏健派のロウハニ前政権との間で始まった。双方が期待を示し一定の前進があったとされる。だが、6月のイラン大統領選で強硬派が政権を奪い、中断していた。

 再開すら危ぶまれる中、ライシ政権がテーブルに着き、前政権が手掛けてきた交渉を土台に話し合いを進める方針を示したのは大事な一歩ではある。とはいえ、互いへの不信感は根深く、先行きは到底楽観できない。

 イラン側は「全制裁の一斉解除」と「米国が二度と核合意を離脱しない保証」を求めて譲らない。合意を踏みにじった米国側にも責任はあるが、国際ルールから外れた核開発や中東各地でのテロ支援は自制しなければならない。厳しい財政状況を脱するためには歩み寄りが求められる。

 バイデン政権が核合意復帰の意向を示す一方、決裂を見据えた「別の選択肢」に言及し始めたことも懸念される。可能な範囲で制裁を解くなど、段階的に合意を正常な軌道に戻していけるよう冷静な対話を続けてもらいたい。

 核合意が形骸化したままでは中東の緊張が高まり、国際社会への影響も大きい。米イラン双方が強硬策にこだわるほど協議決裂のリスクは高まる。両国には粘り強く妥協点を探る努力が欠かせない。

(2021年12月03日 08時00分 更新)

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