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中国テニス選手 納得できる安否情報示せ

 真偽がはっきりしないまま幕引きを図れば、国際社会の不信が続こう。中国の有名な女子テニス選手、彭帥さんが一時失踪した問題である。

 発端は彭さんが今月、短文投稿サイトの微博(ウェイボ)で、共産党最高指導部メンバーだった元副首相との不倫関係を告白したことだった。十数年前に始まり、性的暴行を受けたことをうかがわせる記述もあったという。

 投稿はすぐ削除されたものの、インターネット上で内容が拡散。直後に彭さんの動静が途絶えて波紋が広がった。

 四大大会でダブルスを制したこともある実力者の消息不明に危機感を強めたのはテニス界だ。女子ツアーを統括する女子テニス協会は公正な調査を求める声明を出し、大坂なおみさんらトップ選手も続いた。米国や国連人権高等弁務官事務所の報道官らも懸念を示し、国際的な関心と批判が高まっている。

 告白が事実なら、元副首相による女性アスリートへの重大な人権侵害である。来年2月に北京冬季五輪を控える中国では彭さんの無事を積極的にアピールしているが、あまりに不可解な点が多い。

 中国国営メディアが突然、彭さんのものとするメールをツイッターで公開した。その内容は「私は家で休んでいるだけ」とする一方、性的暴行は「事実ではない」と否定している。しかし、本人の意思で書かれた文章なのか疑問視する声が広がった。その後に公開された動画なども信ぴょう性が疑われているという。

 中国では体制に批判的な発言をした人らが拘束され、監視下に置かれる事案が相次いでいる。彭さんも同じ状況ではないかと危惧されている。問題の解決には、彭さんの自由と安全が確保されていると誰もが納得できる情報を示すことが求められる。

 突如として問題解決に乗り出してきた国際オリンピック委員会(IOC)の対応も疑念を深めている。バッハ会長が彭さんとテレビ電話で通話し、「北京の自宅で安全かつ元気にしている」と無事を確認したと発表した。それまで静観を続けていただけに唐突な感が否めない。

 五輪への影響を危ぶむIOCが中国と連携して沈静化に動いたとの見方が浮上している。バッハ会長の行動に対して、国際人権団体が「中国政府のプロパガンダに加担するな」と批判するのも無理はなかろう。IOCは、彭さんと通話した経緯を含めて詳細な説明をするべきだ。

 五輪を巡っては、新疆ウイグル自治区での弾圧など人権問題への懸念を深める米英などが政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」を検討している。その動きが今回の問題で強まりかねない。

 日本政府は「状況を注視する」と深入りを避けている。五輪の対処方針もまだ決めていない。冷静に今後の情勢を見極めねばならないが、毅然(きぜん)とした対応も必要になろう。

(2021年11月29日 08時00分 更新)

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