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1954年のこと。大阪から高松…

 1954年のこと。大阪から高松への客船で、香川県の金子正則知事が船室に乗り込むと同室者がいた。後に「世界のタンゲ」と呼ばれる建築家丹下健三氏だった。この出会いから4年後、香川県庁舎は誕生する▼戦後復興が進む中、金子知事は設計に多くを求めたという。県民の希望となる記念塔に。都市計画の一助に。民主主義の時代にふさわしく―。丹下氏は応え、伝統建築の美意識と現代的な開放感を鉄筋コンクリートで実現してみせた▼その香川県庁舎(旧本館・東館)が国の重要文化財に指定される。「戦後庁舎建築の最高傑作」と歴史的価値が認められてのことである▼文化財建築といえば寺社などの木造建築が思い浮かぶが、近年は戦後建築にも指定対象が広がっている。名建築とされながら、老朽化や再開発で取り壊される例が多いからだ▼戦後建築を守り続けるのは意外に難しい。メンテナンスに手がかかり、現在の建築規制に合わせる必要もある。香川県庁舎は内外観に影響しないよう地下を掘り、建物の基礎に免震装置を据える大工事を行った▼実は岡山県も、丹下氏の旧倉敷市庁舎(市立美術館)や、同氏の師・前川国男氏の県庁舎、現役では安藤忠雄氏の高梁市成羽美術館…と現代名建築の宝庫だ。この価値や魅力を広く伝えたい。建物の未来はその先に見えてこよう。

(2021年11月26日 08時00分 更新)

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