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衆院選・社会保障 財源含めた議論欠かせぬ

 国政選挙で社会保障と言えば、これまでは医療や年金、介護が争点の中心になることが多かった。今回の衆院選では、子育て支援や格差是正の訴えに各党が力を入れ、様相を変えている。

 岸田文雄首相は菅義偉前首相に続き、子ども関連の政策を一元化する行政組織の創設に意欲を示している。自民党が6月に「こども庁」創設を緊急決議し、政府は先月、有識者会議をスタートさせた。

 立憲民主党も公約で「子ども省」創設を提唱した。行政の縦割りをなくし、施策を充実させる点は同じである。

 子ども関連の政策は幅広い。現在は主に3府省に分かれ、少子化や貧困対策は内閣府、保育や児童虐待防止は厚生労働省、学校教育やいじめ問題は文部科学省が担う。まずは新組織を何のためにつくり、どこまで対応するかを明確にする必要がある。

 公明党も子ども家庭庁(仮称)を設けるとともに、高校3年生までに1人10万円相当を支給するとしている。共産党は児童手当の支給を18歳まで拡充するなど、多くの党が現金給付を掲げている。

 こうした背景に少子化があるのは言うまでもない。2020年に生まれた子は約84万人で過去最少を更新した。

 とはいえ、持続可能な社会保障制度を構築するには、財源も含めた責任ある議論が欠かせない。現金給付や減税を強調し「ばらまき」を競うようなことは避けるべきだ。

 首相は自民党総裁選で、国内総生産(GDP)比2%に満たない子育て関連支出を倍増する考えを示したものの、社会保障の主要財源である消費税については「10年程度は上げることは考えない」と表明し、具体的な財源確保には踏み込んでいない。

 出産育児一時金の引き上げや出産費用の無償化など立民も子育て予算の倍増を打ち出すが、財源論は借金頼みの部分が否めない。

 新型コロナウイルス禍による経済悪化は特に非正規労働者の家計を直撃した。失業や減収で格差が広がり、貧困対策の遅れが浮かび上がった。毎日の食事にも事欠くほど追い詰められた人を救うことはもちろん、財源を後回しにしても急がねばならない。

 子どもについては7人に1人が日本では貧困状態にあり、ひとり親の家庭などはその割合が高いとされる。

 ただ、貧困に陥っている人を見つけ出して手当てをするだけでは問題は解決しないと専門家も指摘している。貧困ではない家庭が何かの拍子に貧困に陥ることがないように網を張ることが重要である。

 社会保障制度は少子高齢化に加えて、雇用のほころびで基礎が揺らいでいる。自由な働き方を選ぶことは理解できるものの、非正規労働者が将来、貧困になるのを防ぐことが求められる。厚生年金に加入できるようにするなど、格差を根本から是正する具体策を各党は競うべきだ。

(2021年10月26日 08時00分 更新)

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