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衆院選・外交安保 「対抗」一辺倒でいいのか

 米中が厳しく対立する中、東アジア情勢は緊迫感を増している。外交・安全保障政策は重要な争点の一つだ。

 中国は沖縄県・尖閣諸島や台湾に圧力をかけ続け、拡張路線を隠さない。北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返している。脅威に直面する日本は国や地域の安定をどう図り、世界での役割をどう位置付けていくか。各党は難題を解決に導くための総合的な戦略と、具体的な道筋を示さなければならない。

 新型コロナウイルス対策などに比べ有権者の関心が高い分野とはいえないが、国防は政治の最大の責務である。激変する安保環境について国民の安心につながるよう、冷静な論戦を求めたい。

 外交・安保政策の基軸が日米同盟であるとする点では多くの党が一致している。ただ、米バイデン政権が対中強硬姿勢を強める一方、日中は経済で深く結び付き、気候変動など協力すべき懸案も抱える。これまで以上に是々非々の取り組みが重要になる。

 自民党は防衛力の大幅強化を前面に打ち出した。長期指針である国家安全保障戦略などの改定を掲げ、国内総生産(GDP)比でおおむね1%以内に抑えられてきた防衛費を2%以上にすることも念頭に増額を目指す。ミサイルを相手国の領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」の保有にも意欲を見せる。

 安倍、菅両政権は、台頭する中国を念頭に防衛力強化を進めてきた。安倍政権で外相を務めた岸田文雄首相の外交路線も従来と変わらないとみられる。だが、中身を精査しない無軌道な防衛費の増額には危惧を覚える。連立を組む公明党は距離を置く。

 立憲民主党は専守防衛の原則に徹するとして、敵基地攻撃能力については技術的な難しさやコストの面から「現実的でない」と否定した。野党も中国への警戒感は共有している。とはいえ危機回避のための対案は物足りなさが否めない。実現性を踏まえ、説得力ある選択肢をしっかりと示すことが必要だ。

 半導体、量子技術といった経済安保に関わる産業・科学政策の必要性は各党とも認めた。重要な技術・物資の流出防止や、サプライチェーン(供給網)強化に向けて政策を競い合ってもらいたい。

 岸田首相は戦後最長の外相経験から、外交・安保は継続性や信頼が大切だとの信念を持つ。ならば、選挙戦では、戦後維持してきた平和主義の価値観を軸に、対抗一辺倒でなく環太平洋諸国などとの連携や、対話を通じた米中の緊張緩和についても、もっと議論を深めるべきだ。

 核軍縮も避けられないテーマである。来年3月に予定される核兵器禁止条約の締約国会議について、立民や公明はオブザーバー参加を訴え、自民は否定的だ。日本が国際社会で存在感を示していくためにも、核廃絶に向けた実効性ある取り組みが問われる。

(2021年10月25日 08時00分 更新)

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