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衆院選・経済政策 成長の道筋を明確に示せ

 安倍晋三政権が掲げ、菅義偉政権が引き継いだ経済政策のアベノミクスは、株高を演出した一方で、労働者の賃金上昇にはつながらなかった。三本の矢の一つ、民間投資を促す成長戦略は決め手を欠いているのが現状だ。

 今回の衆院選では、与野党ともに格差是正に取り組む姿勢をアピールする。だが、分配政策と表裏一体である財源についての裏付けはあいまいな上、日本の経済を成長に導く明確な道筋も見えてはこない。与野党は成長を促す具体策を示し、実現可能性を踏まえた政策論議を深めることが求められる。

 アベノミクスによる金融緩和や財政出動が、長期の景気拡大につながったことは確かだ。第2次安倍政権が発足した2012年12月に始まった景気拡大は18年10月まで続いた。日経平均株価も今年2月にバブル期以来、約30年半ぶりに3万円台に乗せた。

 企業の内部留保も積み上がり、20年度の利益剰余金は484兆円と9年連続で過去最高を更新した。だが、従業員に十分な還元はされず、15年平均を100とした実質賃金の水準は20年平均で98・6に下がっている。

 経済政策を巡っては、岸田文雄首相は目標として「成長と分配の好循環」を掲げる。従業員の賃金を引き上げた企業に対する税金の優遇や、低賃金と指摘される看護師、介護士、保育士らの所得向上などによって分厚い中間層の再構築を目指すとしている。

 立憲民主党は時限的な措置として、年収1千万円程度までの人を対象に所得税を実質免除とすることや、消費税の5%までの引き下げを打ち出している。

 いずれも分配に力点を置く一方、必要な財源をどう捻出するのかについての説明は、必ずしも明確とは言えない。岸田首相は自民党総裁選で掲げた金融所得への課税強化は先送りした。立民は財源について、富裕層や超大企業に応分の税負担を求めることで賄うとし、法人税にも所得税と同様の累進税率を導入する考えだが、財政がどうなるのかには踏み込んでいない。

 消費税に関しては、共産党のほか、国民民主党、日本維新の会が5%への減税を主張する。社民党は3年間限定で税率ゼロ、れいわ新選組は消費税廃止を訴える。減収分をどう補うのか、しっかりと示すことが必要だ。

 今後の日本経済が目指す成長戦略についても、説得力ある政策を競い合ってもらいたい。与野党は、経済発展に向けた成長戦略の柱に科学技術への重点投資を据える。ただ、岸田政権は有識者らによる「新しい資本主義実現会議」を今月設置したばかりで、具体化はまだ先だ。

 選挙戦では、アベノミクスの功罪を踏まえた上で、今後の経済のあるべき姿と、そこへ至る確かな道筋を議論することが重要だ。与野党の政策提案力が強く問われている。

(2021年10月22日 08時00分 更新)

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