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〈朝焼小焼だ/大漁だ/大(おお…

 〈朝焼小焼だ/大漁だ/大(おお)羽(ば)鰯(いわし)の/大漁だ〉。そんな金子みすゞのおなじみの詩を思い出した。倉敷市立美術館で開かれている「五味太郎作品展[絵本の時間]3」で、ベテラン作家の初期の作品「くじらだ!」の原画を目にした時である▼大きな湖の上を飛んでいた渡り鳥が舞い下りて叫んだ言葉が題名だ。クジラを捕まえようと、漁師たちはわれ先にと舟に飛び乗って出掛ける▼ところが、勇んできたのにクジラの姿はさっぱり見えない。渡り鳥が言ったのは空から見た湖の形。クジラの姿にそっくりだった▼視点を変えると違ったものが見えるということでは、冒頭の詩「大漁」も同じだろう。こう続く。〈浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰯のとむらい/するだろう〉。違う視点から見る大切さはもちろん、創作の世界だけのことではない▼舌戦が本格化した衆院選で、与野党が訴える経済対策は、個人への現金給付や減税など大盤振る舞いが目立つ。「国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかり」。そう心配するのは、月刊誌に寄稿した財務省の事務次官だけではあるまい▼五味太郎展には子どもたちも訪れ、作品に見入っていた。そうした世代の視点に立てば、財源を国債に求めるのは、将来の財政的負担を押しつけられるのと同じように見えるかもしれない。

(2021年10月21日 08時00分 更新)

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