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パンドラ文書 国際連携で課税逃れ防げ

 世界の現旧首脳や高官、企業経営者ら富裕層による資産隠しや税金逃れの実態が再びあぶり出された。

 タックスヘイブン(租税回避地)を使った不透明な資金運用だ。共同通信など117カ国の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した新資料「パンドラ文書」に基づく取材で、そんな実態が明らかになった。

 回避地を使う企業や富裕層によって、世界で年間4270億ドル(約48兆円)の税収が失われているとの調査もある。本来は自国に入るべき税収が無くなることで、税負担の公平性が損なわれ、社会保障や行政サービスの財源にも打撃となる。国際社会が連携して課税逃れの包囲網を構築し、監視と規制を強化していくことが必要だ。

 パンドラ文書は回避地での法人設立を担う法律事務所などの内部文書1190万件。ICIJが回避地の実態を暴露した5年前の「パナマ文書」などを超えるデータ量で、約2年かけて分析した。

 パンドラ文書で回避地とのつながりが判明した政治家や政府高官は91カ国・地域の330人以上に上る。格差是正や汚職撲滅を訴えていた公人も多く含まれている。例えば、富裕層への課税強化で格差是正を訴えていた英国のブレア元首相は、回避地を介した株式買収により多額の税金を免れていた。

 日本人関係では、2009年に経営破綻した商工ローン大手の創業者が破綻の前後、回避地に複数の法人を設け、別の回避地の法人と融資契約を結ぶなど、破産管財人が把握していない取引が明らかになった。破産手続きでは、関連企業への多額の資産流出が指摘されていた。

 回避地を使うこと自体は合法だ。とはいえ、弁護士ら専門家から規制回避の指南を得るには莫(ばく)大(だい)な費用が必要で、実際に活用できるのは富裕層に限られるのが実態という。富裕層が特権的に回避地を使い、さらに蓄財を増やせば、格差は半永久的に広がりかねない。

 ICIJによるパナマ文書報道などもあって、回避地を巡る国際的な規制は強化されてきた。その一つが各国の「タックスヘイブン対策税制」だ。実態のない海外子会社の所得については、親会社の所得と合算し、課税対象として扱われる。経済協力開発機構(OECD)の「共通報告基準」を通じては、参加国の税務当局が、国内居住者が持つ海外金融機関の口座の残高といった情報を収集できるようになった。

 法人税率を巡っては今月、OECDの主導で136カ国・地域が、共通の最低税率を15%とするなど国際課税強化で合意した。税負担の公平性確保に向け、重要な一歩だ。不透明な資金取引を防ぐためにも、今後も国際社会が協調し、法や制度の不備を是正する取り組みが求められる。

(2021年10月19日 08時00分 更新)

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