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一目写真を見ただけで行ってみた…

 一目写真を見ただけで行ってみたくなった。1階と地下1階を長いトンネル状の「階段本棚」がつなぐそこは、早稲田大に今月開館した国際文学館、通称・村上春樹ライブラリー▼今年72歳を迎えた作家の村上さんが、散逸を防ぎたいと直筆原稿やレコードを寄贈、寄託した。「若い世代に開かれた、自由で生きた場所に」と交流スペースや音響設備完備のスタジオもある▼ライブラリーの響きはフレッシュで、作品が50以上の言語で紹介されている国際派にぴったりだ。日本語でなら、やはり「文庫」になるだろう。もとは和語で「ふみくら」と読ませたという▼今はまとまった蔵書を指すことが多いが、では、全国にあまたある文庫から一つクイズを。知る人ぞ知る京都大所蔵の「旭江(きょっこう)文庫」は、何に関する国内最大のコレクションか。答えはイタリアを代表する詩人ダンテである▼岡山出身の大賀寿吉(じゅきち)(号・旭江)が明治末から昭和初めにかけて原典、翻訳、伝記から学術誌の断簡まで桁外れの情熱で集めた。製薬会社勤務と在野ながら当時最も知られた研究者の一人であり、長編叙事詩「神曲」を翻訳した山川丙三郎らの支援者でもあった▼約3千点の文献はいまだ研究の深化に欠かせないそうだ。ダンテが亡くなって今秋で700年。時を超えて継承される文学の底力に胸躍る秋でもある。

(2021年10月19日 08時00分 更新)

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