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原油価格の高騰 コロナ禍克服の足かせに

 原油価格の高騰が続いている。新型コロナウイルス禍からの景気回復に水を差す要因にもなりかねない。警戒を怠ってはならない。

 ニューヨーク原油先物市場は、指標となる米国産標準油種(WTI)が1バレル=80ドルを超えた。国内のレギュラーガソリンの1リットル当たりの全国平均小売価格も今月上旬から160円台になった。原油、ガソリンとも7年ぶりの高値圏にある。

 コロナ後を目指して世界経済が回復に向かう中で、原油需要も増加している。にもかかわらず、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国でつくる「OPECプラス」は、今月初めの会合で、追加増産を見送った。需給バランスの不均衡な状態が原油高の背景にある。

 脱炭素社会に向けて、各国が石油依存の縮小に取り組み始めている。産油国側には、将来の需要減を見越して「稼げる時に稼いでおこう」との思惑もうかがえる。

 一方、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない天然ガスは、日本だけでなく欧州や中国でも発電需要が高まり、価格が急騰していた。その代替燃料として相対的に安価な原油の需要が拡大したことも、原油高につながったという。

 日本にはもう一つ心配な点がある。為替が円安に進み、原油輸入コストの増加につながっていることだ。インフレを懸念する米国では金融引き締めが始まろうとしている。金利差からドルなどを買う動きが加速すれば、さらに円安が進みかねない。原油や天然ガスを海外に依存する日本にとっては重荷となろう。

 原油高の影響は経済活動や国民生活を直撃する。国内では自家用車をはじめ、タクシー、輸送・配達用車両、航空機などに影響が出始めている。石油化学製品などの製造業にも打撃となる。

 コロナ禍は第5波の猛威が収まり、平静を取り戻しつつある。秋の観光シーズンに向けて経済活動が少しずつ活発になってきた時期だけに、関係業界にとっては大変な痛手になろう。原油高が長期化すれば、増えたコストを企業努力で抱え込むことには限界もあるはずだ。

 大手電力会社はすでに、来月からの値上げを公表している。家計の負担が増えることにより、消費意欲が低下することも懸念される。

 脱炭素社会の実現へ向けた取り組みは強化していかなければならないが、現在の社会情勢では、一気に原油需要が無くなることはない。当面の増産について、各国が連携して、産油国と粘り強く協議していく必要がある。

 欧州連合(EU)は、エネルギー価格の高騰を受けて、給付金や減税などによる貧困層への支援策を打ち出している。日本でも、低所得層の状況や資源高の影響が大きい業界の動向に注視し、遅れることなく支援策の検討を進めなければならない。

(2021年10月18日 08時00分 更新)

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