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ストップ!脳卒中(内科) 岡山市立市民病院神経内科主任医長 出口健太郎氏

出口健太郎氏
出口健太郎氏
ストップ!脳卒中(内科) 岡山市立市民病院神経内科主任医長 出口健太郎氏
 紙上講座第7回目(最終回)は脳卒中と頭痛をテーマに最新の知見を紹介します。

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 脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、脳が障害を受ける病気です。 脳卒中を発症すると、障害を受けた脳が司っていた身体機能や言語機能が損なわれたり、場合によっては死に至ったりします。 脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」や「くも膜下出血」があります。

 近年は、脳卒中のことを「中風(ちゅうぶ)になった」と言われる患者さんも少なくなりましたが、「中」とは「あたる」という意味で、風にあたって起こる病気と言われていました。それに「卒」=前触れがない、という字がついて、さらに「脳」がついて今日の「脳卒中」という言葉が生まれました。古代にはこの病気は外の悪い風にあたって生じると思われていましたが、江戸時代からは、内から起こる病気と考えられるようになり、江戸時代の儒学者・貝原益軒は「養生訓」で、肥満と飲食が原因であると、まだCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)もない時代から指摘していたことには驚きます。

 目覚ましい医学の進歩にも関わらず、現在でも、その後遺症のため、寝たきり原因疾患第1位の脳卒中は、社会的にも注目され、2018年12月10日、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が可決・成立しました。法律ができたことで、脳卒中は日本国民全員が予防を考えていかなければならない課題となりました。

 2021年3月からは、脳卒中・循環器病対策基本法に関連して、日本脳卒中学会と日本循環器学会は「脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画」を発表し、ストップ脳心血管病を掲げ、脳卒中と循環器病の克服を目標に活動しています。この計画の重要な項目の一つに、国民への予防の啓発が挙げられます。具体的には、

STAGE1 生活習慣管理と危険因子発現予防

 すべての世代におけるそれぞれのライフステージに合わせて、減塩・禁煙・節酒・身体活動量増加を含む栄養・食生活の改善を目指します。特に高血圧・心不全・腎不全の予防につながる減塩対策が重視されており、社会的予防として、加工食品中の塩分含有量を5年間で15%、10年間で30%減少させることが盛り込まれています。

STAGE2 脳卒中・循環器病の発症予防と危険因子管理

 脳卒中・循環器病の主要な危険因子である高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満症・心房細動を適切に管理し、発症を予防するための1次予防を行うことを目標にしています。特に高血圧、心房細動は、脳卒中発症ハイリスク因子なので、優先的な受診勧奨基準とされ、検診や医療機関で、血管機能検査や血液検査でわかる心血管バイオマーカーの導入による評価を行い、脳卒中への進展を予防する先進的な試みが考えられています。

STAGE3 脳卒中・循環器病の早期治療と再発予防

 脳卒中・循環器病の早期発見、早期治療(2次予防)を行うことで、病態の進行を抑え、発症後の適切な管理により、再発防止、後遺症治療、残存機能の維持・回復・リハビリテーション、社会復帰などの3次予防を推奨しています。市民の皆さんへの啓発を広く行い、早期受診ならびに適切な救急車の利用などを促すことが重要です。

STAGE4 脳卒中・循環器病の死亡抑制

 脳卒中・循環器病による死亡を抑制することを目標にしています。

 このように、脳卒中の予防は、個人の問題ではなくて、社会的な枠組みの中で全国民がいっしょになって考えていく問題になってきました。ところで、1次予防で述べた高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満症・心房細動は全て、現在、市民の皆さんへの脅威である新型コロナウイルス感染症の重症化因子となっています。これは、新型コロナウイルス感染症が、血管に直接影響しうることが一因と考えられています。当院で人工呼吸管理になった患者さんの多くが、肥満指数であるBMI(Body Mass Index)25以上の肥満を有していました。「ストップ!脳卒中」の試みは、「ストップ!コロナ重症化」と直結しています。このコロナ禍を生き抜くために、今日から食生活を見直し、運動不足を解消するようにみんなで努力しましょう。

(2021年10月16日 15時58分 更新)

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