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吉備の環PT見聞録 笠岡・白石島「疫病封じ神社」 島民の無事祈る97歳

旧庄屋宅の敷地内にある「神浦神社」と島の五大波切不動の岩の一つ
旧庄屋宅の敷地内にある「神浦神社」と島の五大波切不動の岩の一つ
 まだ知られていないニュースがきっとあるはず―。そんな期待を胸に1~3日、地域住民の声をじっくりと聞いて回る山陽新聞社の「吉備の環(わ)プロジェクト(PT)」のトップバッターとなった男3人衆は笠岡市の笠岡諸島を巡った。聞けば聞くほど出てくる興味深い話の数々。そのほんの一部を紹介する。

 「コロリ祭りってのがあるんですよ」。初日に訪れた白石島で、事前にガイドを依頼していた島民の天野正さん(76)が教えてくれた。疫病封じにご利益があるという「神浦神社」である。

 新型コロナウイルス禍の今、何か伝えられるものがあるかもしれない。島在住の最高齢、天野勝子さん(97)を訪ね、詳しい建立の経緯を聞いた。

 勝子さんによると、起源は明治期までさかのぼる。当時は日本全土で「3日コロリ」と恐れられたコレラが猛威を振るい、白石島も例外ではなかった。ただ、どうしてなのか、玄関口となる白石島港近辺の「築出(つきだし)地区」だけは犠牲者がゼロ。それにあやかり、島の五大波切不動の岩の一つがある港から目と鼻の先の旧庄屋敷地内に社を構えたというのだ。

 「昔は毎年、夏と秋に甘酒などをこしらえていた」と勝子さん。ただ、結婚を機に隣の集落に移り、年齢を重ねて出歩くことがほとんどなくなり、近年は疎遠になっていた。そんな中の2020年夏ごろ、コロナにまつわる本紙の記事を読んで神社を思い出したという。すぐに近所の同級生を電話で誘ってお参りし、祈った。「どうか、みんながならん(感染しない)ように」

 この“ドラマチック”な話を記者たち以上に熱心に聞いていた正さんも「島のことは把握しているつもりだったが、建立の話は初めて聞いた。勉強になった」。来客にプレゼントしているという勝子さんお手製のお守り「さるぼぼ」を4人全員が受け取り次の旅に向かった。

 ちなみに、1960年代中頃には赤痢も流行したが、同様に築出地区だけは無事だったらしい。近年は夏のみの祭りを行っている地区の人をはじめ、島民にコロナ感染者は出ていないという。

 ほぼノープランで回ったのにこんな話が聞けるとは。人と話すという記者の原点に改めて立ち返る旅となった。

(2021年10月04日 22時28分 更新)

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