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残薬解消へブラウンバッグ運動 岡山県内薬局で取り組み拡大

ブラウンバッグ運動に取り組むそよかぜ薬局の冨永さん(画像の一部を加工しています)
ブラウンバッグ運動に取り組むそよかぜ薬局の冨永さん(画像の一部を加工しています)
 患者が飲み忘れるなどして自宅に積み重なっていく「残薬」の解消に薬局が取り組む「ブラウンバッグ運動」が、岡山県内でも広がってきた。患者にバッグに残薬を入れて持ってきてもらうことで薬剤師が実態を把握し、処方医と協力して飲み忘れ対策を講じたり、再利用や減薬につなげたりといった薬の適切な管理・処方を図る狙い。慢性疾患を抱え定期的に薬を服用する高齢者が増える中、県や国も運動を後押ししており、高齢化の進む県中北部を中心に県南でも取り組むところが出ている。

 「ここに薬を入れてるからね」。鏡野町吉原のそよかぜ薬局で、薬剤師の冨永美香子さん(71)が医師の処方箋に書かれた薬をバッグに詰め、高齢の女性患者に差し出す。

 同薬局は2019年度から運動に取り組む。残薬の持参時だけでなく、新たに処方された薬を持ち帰ってもらう際にも使い、買い物時のエコバッグさながらに“お薬バッグ”として利用している。

 残薬が持ち込まれたら理由を尋ね、処方医にも相談しながら改善を検討。例えば飲み忘れの場合は、同じタイミングで飲む複数の薬を一包みに。錠剤が苦手な人には、粉末に替える。残薬の分だけ次回の薬を減らしてもらうこともある。

 「薬を飲み残していることは患者自ら言い出しづらい」と冨永さん。「バッグがあれば薬を入れて持ち帰り、余った分をそのまままた薬局に持って行くだけ。罪悪感が和らぐ」と効果を説明する。

実証実験

 県内で運動が注目を集めるきっかけとなったのは、県がその普及に向けて県薬剤師会、県医師会などと連携して19年度に行った実証実験だ。高齢化の進む津山市と鏡野町にある47の薬局でバッグ約1800枚を配り、利用を呼び掛けた。

 残薬のほか、家にある市販薬やサプリメントも一緒に持ってきてもらい、飲み合わせに問題がないか、効能が重複していないかを確認。実験後には、参加薬局の6割が「残薬整理を積極的に進めることにつながった」と評価している。

 実証実験は20年度にも高梁市と新見市の19薬局で行われた。現在は実験で得られたノウハウを生かしてこれら4市町で拡大しながら継続実施されているほか、岡山市内でも個別に取り組む薬局が誕生するなど、各地に広がりつつある。

 県は実験結果を踏まえ「飲み忘れや飲み過ぎ、誤服用による健康被害を防ぐ観点から、運動は効果がある。さらに拡大させたい」(医療推進課)とし、今後も情報提供などを行っていく考えだ。

医療費削減

 薬はきちんと服用しないと十分な治療効果が得られず症状が悪化する恐れがあるほか、医療費も無駄になる。残薬を減らす運動は、医療費の節減効果も期待されている。

 日本薬剤師会の試算(07年度)によると、残薬の薬剤費は年間約475億円にも上る。患者の自己負担(原則最大3割)分を除く大半は公的医療保険で賄われており、国は16年度から薬剤師が行う服薬の指導や管理を診療報酬の対象に加えるなど取り組みを促し、運動の普及を後押しする。

 ブラウンバッグ運動に詳しい九州大大学院薬学研究院の島添〓雄准教授(臨床薬学)も「残薬を出さない適切な服薬は患者のQOL(生活の質)を上げ、医療費削減にもつながる。運動に取り組むメリットは大きい」と指摘している。

〓は隆の生の上に一

 ブラウンバッグ運動 1990年代に米国で茶色の袋で薬剤管理が行われたことにちなむ。その後、福岡市や東京都文京区、板橋区などで「節薬バッグ」「お薬バッグ」といった名称で広がった。津山市など県北の4市町で使用されているバッグは、「おくすり整理袋」と書かれた縦35センチ、横28センチ。茶色の不織布にピンクの桃のイラストがプリントされ、患者の名前を書く欄もある。岡山市などの薬局ではまた異なるバッグが使われている。

(2021年09月30日 21時25分 更新)

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