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コロナ禍潜むがん 感染対策徹底し受診促せ

 今月はがん征圧月間である。新型コロナウイルス禍はがん治療にも影響を及ぼしている。その一つが、感染を心配して検診を受ける人が減ったり、症状があって本来、病院に行くべき人が受診していなかったりする問題だ。

 日本対がん協会によると、全国の支部が昨年実施した胃、肺、大腸、乳、子宮頸(けい)の五つのがん検診の受診者は、前年に比べて3割も減った。同協会以外の検診なども合わせると、日本では昨年、少なくとも1万人のがんが未発見となった恐れがあるという。看過できない問題である。

 検診や受診控えで、発見の遅れるケースが増える。そうした懸念は横浜市立大のチームが先日、米医学誌に発表した研究結果でも示された。

 同大病院と国立病院機構横浜医療センターで2017~20年、新たに消化器がんと診断された5千人余を調べたところ、コロナの流行が始まった20年3月以降は、その前と比べ月平均で胃がんは14%減、大腸がんは27%減だったというものである。

 特に症状の出にくい早期での診断が減っており、大腸がんの進行度別では、早期の0、1期が3割以上も減った。一方でがんがより進行した3期は7割近く増えた。

 日本肺癌(がん)学会も、全国の大学病院や専門病院などを対象に20年の肺がんの新規患者数を調査した結果、前年より6・6%減少したと4月に明らかにしている。

 がん検診は健康な人が受けるものだ。感染を恐れて受診を控える人がいても理解はできる。一方で、初期のがんは気付かないうちに進行する。診断が遅れないよう定期的に検診を受けてほしいと専門家は呼び掛けている。

 早期に発見し、治療を始めるほど経過がよい傾向は国立がん研究センターが今春まとめた10年生存率でも見られた。全国の患者約23万8千人の大規模データを初めて使って算出したもので、08年にがんと診断された人の10年後の生存率は59・4%だった。

 進行度別では、早期の1期に比べて、他の部位に転移した4期の生存率が低かった。胃がんの場合、1期は90・9%で4期が6・9%、大腸がんは1期が93・6%で、4期は11・6%だった。

 治療技術は進んでおり、生存率はさらに改善することが期待できる。ただ、がんが「不治の病」でなくなった一因には、検診が広まり早期発見、治療の流れが加速したこともあるのは間違いない。

 安心して受診できる環境を整えるため、国や自治体、医療機関は感染対策を徹底するのはもちろん、それを受診する人に対して周知することが大切だ。

 がんが早期発見できれば、治療による体への負担も、経済的な負担も軽くて済む。日本人の2人に1人ががんを患う時代であることを、私たち一人一人が心にとどめ、積極的に受診したい。

(2021年09月26日 08時00分 更新)

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