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中国のTPP申請 本気度が厳しく問われる

 日本など11カ国が参加する通商枠組みの環太平洋連携協定(TPP)へ、中国が正式に加入を申請した。対立する米国がTPPを離脱する中、アジア太平洋経済圏で主導権を握り、米国に対抗する狙いとみられる。

 TPPは貿易自由化を進めるため多くの農産品や工業製品で関税を削減・撤廃し、知的財産権の保護、データ流通の透明性確保など幅広いルールを定める。アジアの通商協定を巡っては日韓中などが来年1月までの発効を目指す地域的な包括的経済連携(RCEP)があるが、TPPは、より高水準の内容だ。

 このため新規加入のハードルは極めて高い。まずは現行のルールを全て受け入れることが大前提である。そうした覚悟が中国にあるのか。真意を慎重に見極めることが欠かせない。

 中国は習近平国家主席が参加について「積極的な検討」を表明した昨秋以降、周到に準備を進めてきたとされる。申請を機に金融市場のさらなる開放やサービス業での外資規制緩和といった構造改革に取り組むという。

 仮に世界第2位の大国である中国が加われば経済圏は桁違いに巨大となり、輸出や投資の増加など加盟国に恩恵をもたらすことが予想される。早速歓迎の意を示した国があるのはうなずける。

 だが、現状では多くの基幹産業で国有企業としての優遇を続け、他方でIT大手など民間企業への締め付けを強化。データの国外持ち出しを規制する法律も整備した。経済活動全般への統制を強める習指導部の政策は明らかに自由貿易を支える理念と逆行している。

 TPPは加入に向けた交渉に入るか否かを決める段階から全加盟国の同意が不可欠となる。中国はそもそも加盟国であるベトナムとは領土問題を、オーストラリアとは貿易摩擦を抱えており、交渉を始められるかは見通せない。

 本来TPPは台頭する中国をけん制する米国主導の「包囲網」だった。ところが、肝心の米国がトランプ前政権時代に離脱。申請はその不在を突いた形で、加盟国への揺さぶりとの見方がある。台湾の参加を妨げる狙いもありそうだ。経済面だけの意味合いにとどまらず、安全保障の観点も交えた戦略的な対応が求められる。

 今年の議長国である日本の役割は大きい。重要なのは多国間の意見をしっかりと調整し、高い水準の自由化を目指すというTPPの理念を曲げないことである。中国には、透明性と公平性を前提にした厳格なルールを順守する本気度を厳しく問わなければならない。

 米国はバイデン政権に交代したものの、国内産業の保護を理由にTPP復帰には消極的だ。域内の経済秩序を維持するためには、米国の再加盟を粘り強く働きかけていく必要もある。

(2021年09月23日 08時00分 更新)

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