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北朝鮮ミサイル 瀬戸際外交で交渉動かぬ

 北朝鮮が種類の異なるミサイルを相次ぎ発射した。軍事力で挑発する「瀬戸際外交」の再開は容認できない。

 弾道ミサイルは2発が日本海に向けられた。岸信夫防衛相によると約750キロ飛行し、いずれもわが国の排他的経済水域(EEZ)に落下したと推定される。その2日前には、日本列島の大半を射程に収めるとされる長距離巡航ミサイルの発射実験を朝鮮中央通信が報じた。

 弾道ミサイルは変則軌道で迎撃をかわすタイプとみられ、実際に日本政府の落下点分析は時間を要した。長距離巡航ミサイルは誘導技術によってレーダーに捕捉されにくい低空を飛ぶ。どちらも鉄道などの移動式発射台が使われたとされ、迎撃を困難にする技術の進化も顕著だ。

 金正恩朝鮮労働党総書記は1月の党大会で国防力強化の方針を示し、ミサイルを中核とする兵器システムの開発計画を策定した。日本を取り巻く地域への脅威は一段と増したといえよう。

 このタイミングで発射に踏み切ったのは、8月に行われた米韓合同軍事演習、今月の韓国による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験への反発があろう。「前提条件なしの対話」など新たな北朝鮮政策を掲げるバイデン政権や、政権末期を迎えた日韓に揺さぶりをかけてきたともいえる。米国に向け手持ちの交渉カードを増やしておきたい思惑もうかがえる。

 日本は弾道ミサイル発射に対し、菅義偉首相が「国連安全保障理事会決議に違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難する」と表明したのは当然だ。ミサイル防衛は自民党総裁選でもテーマになろう。

 日本、米国、韓国の北朝鮮担当高官による東京での協議では、対話と制裁を通じて北朝鮮の非核化を目指す方針を堅持する考えで一致した。北朝鮮との対話の糸口を探る上でも3カ国が結束した対応は重要になる。

 一方、北朝鮮の後ろ盾といえる中国とロシアは、非公開の国連安保理の緊急会合で、理事国の多くが弾道ミサイル発射を決議違反と非難する中、北朝鮮擁護の姿勢を示したという。安保理が一致した対応をとれないようでは足元を見られかねない。

 北朝鮮は国連などの制裁に加え、新型コロナウイルス対策で自ら断行した国境封鎖で経済が苦境にある。いわば国民生活を犠牲にしながら、ミサイル技術の開発を推し進めていることになる。軍事挑発は制裁の緩和を遠ざける行為であることを知りつつ、ミサイル開発に頼らざるを得ない深刻な状況も推測できる。

 日米韓をはじめとした国際社会は、制裁を堅持しながら、北朝鮮による挑発行為がエスカレートしないように冷静な対応が求められる。中でも中ロ両国は、北朝鮮に自制を促すため影響力を行使するべきである。

(2021年09月18日 08時00分 更新)

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