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性犯罪の処罰 被害実態映した法制度に

 被害者の回復を後押しし、加害者が適切に処罰されるための法制度はどうあるべきか。刑法の性犯罪規定の改正に向けた議論が本格化する。

 規定を巡っては、前回2017年の改正で強制性交罪の法定刑の下限が懲役3年から5年に引き上げられるなど厳罰化された。ただ被害者団体などを中心に「不十分さ」を指摘する意見は依然多く、法相の諮問機関である法制審議会にきょう諮問されることになった。

 この4年の間に性暴力に抗議する「フラワーデモ」が岡山を含む全国各地で行われるなど、当事者が自らの経験を次々に語り始めている。その声を重く受け止め、被害の実態を十分に踏まえた検討が必要なのは言うまでもない。

 最大の焦点となるのは、暴行や脅迫があったと立証できなければ強制性交罪が成立しない「暴行・脅迫要件」の見直しだ。実際に、暴行・脅迫がなくても「恐怖で体が動かなかった」「何が起きているか分からなかった」といった例は多く、前回改正の際も要件をなくす議論になったが、採り入れられなかった。

 改正の是非については法制審に先立ち行われた法務省の有識者検討会でも賛否が分かれ、今年5月にまとめた報告書は両論併記となっている。同意がない性行為を処罰すべきだとの意見では一致したものの、処罰の範囲をどこまで広げるかの線引きには難しいものがあり結論に至らなかったという。

 要件の撤廃や緩和によって冤罪(えんざい)が生まれかねないという懸念に理がないわけではない。慎重さが当然欠かせまい。ただ、内閣府が3月に公表した調査で「無理やりに性交等をされた被害経験」のある女性は約14人に1人、男性を加えると約24人に1人に上る。スピード感を持った議論が望まれる。

 強制性交罪で10年という公訴時効も「短すぎる」と批判が根強く、検討事項となる。性暴力は「魂の殺人」と言われるほど精神的ショックが大きいため申告に時間がかかり、時効の壁に阻まれて立件できないケースが多いことが背景にある。

 性交に同意する能力があるとみなす年齢の下限「性交同意年齢」の引き上げも重要な論点だ。現行法で定める13歳は明治期に制定されて以来変わっておらず、16歳の英国や韓国、州によっては18歳とする米国など海外の主要国に比べても低すぎよう。

 このほか教師、上司など地位や関係性を悪用した行為や、性的な姿や行為の撮影・盗撮を対象に新たな罪を設けるかどうかなども審議を求める。取り調べへの弁護人の立ち会いなど冤罪を防ぐ手だてについても留意して話を進めてもらいたい。

 検討会に続き法制審部会にも性暴力の被害者がメンバーに加わるとされ、画期的だ。当事者の視点を重視した議論となるよう期待したい。

(2021年09月16日 08時00分 更新)

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