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タリバン暫定政権 国際社会は監視を強めよ

 イスラム主義組織タリバンによる暫定政権がアフガニスタンの国民に受け入れられるものになるのか。国際社会が認める統治ができるのか。大いに不安である。

 タリバンが、暫定政権の統治を宣言し、主要閣僚を明らかにした。カブールを支配下に置いてから3週間以上経てようやく組閣にこぎつけた。組織内で穏健派と強硬派の対立も伝わる。準備不足を露呈したと言えよう。

 新政権の主要ポストはタリバン幹部が独占した。欧米各国は、女性や少数民族を起用し、混乱回避を促すよう求めていた。タリバン側も「包括的な政権」をつくるとしておきながら、最初の段階から約束を裏切る形となった。

 タリバンは旧ソ連が撤退した後、1996年から米国との戦闘に敗れた2001年まで政権を手にしていた。今回の暫定政権は、当時副首相だったアフンド師を首相に選んでいる。旧政権に近い体制に戻った印象が強い。

 穏健派とされる政治部門指導者バラダル師が副首相に就いたものの、米国がテロ組織に指定する最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」のハッカニ指導者が治安を担当する内相になっている。娯楽や女性の社会参加を統制する「勧善懲悪省」も復活させている。恐怖政治が再び繰り返されないか心配だ。

 一方、国連開発計画(UNDP)によると、このまま政治や経済の混乱から抜け出せない場合、最も悲観的なシナリオでは来年半ばまでに国民の97%が貧困層になるという。すでに医療現場などでも資金や物資不足が目立っている。経済的な困窮から、テロ組織や麻薬取引の温床になることへの懸念は消えない。

 米国が撤退するまでのアフガンも、経済を引っ張る主力産業はなく、米国や日本などからの資金支援が柱となっていた。こうした海外からの援助がなくなれば経済基盤も失うことになる。

 今月に入り、日米欧など先進7カ国(G7)と、中ロを中心にした新興5カ国(BRICS)などが、それぞれタリバン政権への対応を協議した。各国の思惑は違うかもしれないが、今は暫定政権の暴走に歯止めをかけるために協力する時だろう。監視も怠ってはならない。

 旧タリバン政権を政府として承認したのはパキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の3カ国にすぎない。これでは政権が長続きするはずがない。国際社会との協調に踏み出さなければタリバン政権に未来はあるまい。

 国際社会から承認されるためには、恐怖による統治をあきらめることだ。国内に残る避難希望者には安全な出国を認めてもらいたい。前政権時代に協力した人たちに対する報復は禁止すべきだ。何より女性や子どもたち、少数民族の人権を守る政権であることを証明することから始めなければならない。

(2021年09月15日 08時00分 更新)

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