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9・11から20年 テロとの戦いを検証せよ

 唯一の超大国だった米国が本土襲撃への報復で始めた「テロとの戦い」が、世界の混乱を深めることになったのは間違いあるまい。

 日本人24人を含む約3千人が犠牲となった2001年9月の米中枢同時テロ「9・11」から20年を迎えた。国際テロ組織アルカイダ系のテロリストが旅客機4機を乗っ取り、ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントン近郊の国防総省に突入。米国を象徴する超高層ビルが崩落するさまは世界に衝撃を広げた。

 節目として、犠牲者への追悼とテロを許さないとの思いを新たにすると同時に、テロとの戦いの意味を改めて検証しなければなるまい。

 米国は同時テロを「民主主義への宣戦布告」と捉え、同盟・友好国を巻き込み、アルカイダをかくまうイスラム主義組織タリバン政権のアフガニスタンへ進攻。03年には大義がはっきりしないままイラク戦争へ進み、米軍の活動は民主化運動「アラブの春」後に内戦化したシリアやリビアなどにも広がった。

 米大学の試算では、米軍などによる対テロ作戦は85カ国で展開され、戦闘による死者は外国人を含め80万人を超える。民間人の犠牲者は33万5千人以上、発生した難民や国内避難民は3700万人。関連戦費は6・4兆ドル(約700兆円)に上るという。

 だが、犠牲に見合う成果があったのかは疑わしい。米軍の性急なアフガン撤退はタリバンを復権させた。イラクの混乱からは過激派組織「イスラム国」(IS)が生まれた。アルカイダやISの影響は各地に広がる。米国主導のテロとの戦いが憎悪の連鎖を招き、新たなテロを生む土壌となったのは否めない。

 世界秩序のバランスも揺らぐ。国力を消耗する米国を尻目に中国が台頭。米国は「唯一の超大国」「世界の警察官」の座を降りた。アフガン撤退では「国益」がなければ友好国も見捨てる米国の冷徹さも見えた。同盟国の日本としても外交政策を練る上で、米国一辺倒の危うさは認識する必要があろう。

 日本には安全保障政策の転換点になった。1991年の湾岸戦争で多額の戦費を出しても国際社会に評価されなかった苦い経験から、インド洋に海上自衛隊を派遣し他国艦船へ給油活動を実行。イラクには人道復興支援で陸上自衛隊を送り「顔の見える貢献」と評価を得た。ただ、軍拡を進める中国など東アジアの安全保障環境が激変しており、自衛隊の海外派遣は危険を招きかねない。国益を冷静に見極めた対応が求められる。

 米国のアフガン進攻から20年を経ても、テロとの戦いは終わりが見えない。武装勢力に若者が加わる一因には貧困があるとされる。タリバンの暫定政権が発足したアフガンをテロの温床としないよう、国際社会は関与し続けなくてはならない。民生支援してきた日本の役割も問われる。

(2021年09月11日 08時00分 更新)

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