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東京パラが閉幕 五輪を含め大会の総括を

 1964年以来、57年ぶりとなる東京パラリンピックが閉幕した。新型コロナウイルス禍にあって、日本に集ったパラアスリートたちが躍動する姿は、世界の人々を勇気づけたに違いない。

 おととい、13日間の日程を終えたパラは、五輪とは違う感動を与えてくれた。両腕がなくキックで力強く進むスイマー、目隠しを着用した助走で踏み切りを合わせるジャンパー…。そのパフォーマンスから人間が持つ無限の可能性を感じさせ、勝負にこだわる気迫を見た。選手と戦う伴走者らの奮闘も輝きを放った。

 自国開催となった日本勢はメダル獲得数が金13個を含む51個と、2016年リオデジャネイロ大会の24個から大きく伸ばした。岡山市在住で車いす陸上の佐藤友祈選手が、前半に2冠を達成して選手団を勢いづけた。

 躍進の背景には五輪と一体となった選手強化がある。政府は大会の招致決定後、パラの所管を厚生労働省から五輪と同じ文部科学省に移し、拠点となるトレーニング施設を設けて底上げを図った。その成果も見て取れる。

 選手たちの活躍でパラスポーツの知名度は飛躍的に高まっただろう。ただ、注目を集めたボッチャの個人で日本勢初の金メダルをつかんだ杉村英孝選手は「勝つことで多くの人に知ってもらう役割がある」と使命感を口にした。普及は途上段階にある。

 大会を一過性のイベントに終わらせてはならない。開催を足掛かりにして、障害の有無に関係なく誰もが活躍できる「共生社会」の実現に向けた流れを加速させたい。

 大会は国際政治の影も映し出した。参加断念とみられていたアフガニスタンの2選手が関係機関の支援で夢舞台に立った。テロや紛争といった危険にさらされながら、命懸けで日本を目指した選手の存在を胸に刻まねばなるまい。

 五輪の開幕から約1カ月半に及んだ東京大会は、コロナ対策が最優先課題であり続けた。五輪、パラとも緊急事態宣言下で原則無観客となり、事前の交流事業も軒並み中止された。選手らと外部との接触を断つ「バブル方式」による封じ込めが続いた。大会関係者の感染拡大は防げたが、国民がプレーを肌で感じ、選手たちと触れ合う機会はほとんどなかった。

 共同通信の調査では、大会開催をよかったと思う人は五輪が6割超、パラが7割近くに上る。一定の理解を得られたとはいえ、代償は大きい。

 異例ずくめの祭典は、開催経費が昨年末時点で1兆6千億円余りに膨張した。数百億円規模のチケット収入が失われ、政府や東京都による負担交渉は難航する可能性があるという。国立競技場など巨費を投じて整備した会場の後利用の課題も残ったままだ。

 政府や大会組織委員会などは開催意義を含めて東京大会を総括し、国民への説明責任を果たさねばならない。

(2021年09月07日 08時00分 更新)

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