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天満屋5度目の五輪挑戦実らず 前田、延期で心身の調整難しく

陸上女子マラソンのゴール後、厳しい表情を見せる前田穂南。天満屋勢として2大会ぶりの五輪は33位に終わった=札幌市
陸上女子マラソンのゴール後、厳しい表情を見せる前田穂南。天満屋勢として2大会ぶりの五輪は33位に終わった=札幌市
 東京五輪第16日の7日、女子マラソンは24歳の一山麻緒(ワコール)が2時間30分13秒で8位となった。日本勢の入賞は野口みずきが優勝した2004年アテネ大会以来。天満屋勢として2大会ぶりに出場した前田穂南は2時間35分28秒の33位だった。

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 追い求めた金メダルがケニア人選手の手に渡り、既に8分が経過していた。札幌を舞台に7日行われた東京五輪の陸上女子マラソンで、天満屋の前田穂南(25)は33位フィニッシュ。自身にとって、そしてチームにとっての夢は世界を前にはかなく散った。

 1992年に創設された天満屋女子陸上部。その夏にヘッドコーチに就き、96年から現場のトップを務める武冨豊監督(67)は今回が2大会ぶり5度目の五輪だった。これまで必ずしも実績があったわけではない5人の選手をマラソン代表に育て上げ、過去最高成績は2000年シドニーと04年アテネの7位入賞。その手腕と合わせ、自国五輪でのメダルを期待する声は大きかった。

 大阪薫英女学院高時代は駅伝で補欠だった前田も名伯楽の下で力を伸ばした。入社3年目の17年夏、北海道マラソンで初優勝。この栄冠で出場権を得た19年9月の代表選考レースは独走で五輪切符をつかんだ。魅力でもある強気は、本番での「金」を揺るがず掲げてきた姿勢にも表れる。

 この日のレース後、いつもの気丈さを保っていた前田の表情がゆがんだのは、五輪が延期されたこの1年について話が及んだ時だ。「コンディションやモチベーションを維持するのが難しかった」。2020年の夏に向けて順調そのものだった体と心をつくり直す作業は困難を極めた。新型コロナ禍で恒例の米国合宿には行けず、さらに貧血や故障で走れない時期も。「先が見えない不安がある」と珍しく弱音を吐くこともあった。昨年11月の全日本実業団対抗女子駅伝でチームはシード圏外に転落。責任を感じて泣き崩れた姿を知る人は少ない。

 決戦の日を万全で迎えられなかった前田だが、序盤から攻め、先頭から大きく遅れても諦めずゴールに向かった。その走りは、はね返されようとも最高峰のステージに挑み続ける天満屋女子陸上部30年の歩みと重なる。「指導する立場にいる以上、選手と一緒に目指す場所が五輪」。武冨監督とまな弟子たちとのチャレンジは続く。

(2021年08月07日 19時32分 更新)

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