山陽新聞デジタル|さんデジ

流域治水 官民連携し施策を着実に

 まち全体で水害を防ぐ「流域治水」関連法が先の国会で成立した。ダムや堤防といった河川整備だけでなく、利水ダムの事前放流、雨水を貯留する施設の整備、避難態勢の確保など、さまざまな施策を組み合わせて講じることで、被害を減らすのが狙いだ。

 近年、気候変動でダムや堤防の能力を超える大雨が降るようになり、大規模な浸水被害が多発している。流域治水は行政、住民、企業など河川流域の関係者が一体となって取り組み、被害を最小限に抑えるまちづくりを目指すものだ。地域の防災力を高めるため、官民が連携し実効性ある施策を着実に実行に移していくことが求められる。

 流域治水を巡っては、関連法の成立に先立ち今春、国土交通省が全国109の1級河川水系を対象に関係機関を交え協議してきた「流域治水プロジェクト」の策定が完了した。岡山県内では1級河川3水系(旭川、高梁川、吉井川)ごとのプロジェクトが策定されている。水系ごとに、河川の氾濫を防ぐ▽被害の対象を減らす▽被害の軽減や早期の復旧―を柱に、実施すべき対策を盛り込んでいる。

 具体的には、堤防整備に加え、用水路やため池など農業関連施設の貯留機能を強化する対策などを掲げた。例えば用水路に関しては、岡山、倉敷市と早島町が、大雨の前に水位を下げて雨水を貯留できるよう管理する。赤磐市では、水田の排水口に「せき板」を設置して排水量を抑え、雨水をためる「田んぼダム」を試験的に導入する。

 岡山市の場合、用水路の水位調整は管理する地元農業関係者らとの連絡体制を整え、河川につながる樋(ひ)門(もん)を操作してもらうなどして水位を下げている。台風12号で深刻な浸水被害が出た2011年以降、取り組みを強化しており、今後も実施エリアを広げていく方針だ。

 同市内で用水路の総延長は4千キロに及ぶ。水位調整は、田んぼが少ない市街地を中心に相応の効果が期待できる一方、水位を下げるには水利権者の理解が欠かせない。取り組みの意義や効果を丁寧に説明することが必要だろう。

 プロジェクトに盛り込まれた対策には、ハード、ソフト両面があり、施設整備など多額なコストが必要なものもある。行政による資金的な支援も含めて優先順位を整理し、効果的に対策を進めなければならない。

 国が流域治水を進める背景には、近年の気候変動による水災害の多発がある。氾濫危険水位を超えた河川数は14年に83だったが、19年には403と5年間で約5倍に増えている。洪水や土砂災害を起こす大雨も増加している。

 水害に強いまちづくりに向けては、適正な森林管理など幅広い観点からの対策も重要となる。プロジェクトに盛り込まれた施策の効果を検証しながら防災機能の総合的な強化を進めてもらいたい。

(2021年07月28日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ