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プラ肥料殻流出、難しさ浮き彫り 国や農業者ら議論 対策まとまらず

岡山市内で開かれたプラスチック肥料殻の意見交換会=21日
岡山市内で開かれたプラスチック肥料殻の意見交換会=21日
田から流れ出して用水路の水面や壁にびっしりとたまったプラスチック製の肥料殻=9日、岡山市中区
田から流れ出して用水路の水面や壁にびっしりとたまったプラスチック製の肥料殻=9日、岡山市中区
大量のプラスチックごみが上流から漂着して蓄積している百間川の中州
大量のプラスチックごみが上流から漂着して蓄積している百間川の中州
 米作の肥料の中に含まれているプラスチック殻が各地の田から流れ出し岡山県南の河口域や海に蓄積して環境への悪影響が懸念される問題で、国や県、岡山市、農業者、環境団体などが一堂に会して意見を交わした。直ちに有効と考えられる対策は見いだされず、問題解決の難しさがあらためて浮き彫りになった。

 「一番の問題は、多くの農家がプラスチックだと知らずに使ってきたことだ」―。会場で参加者が指摘した。

 実際、農業の女性は「プラスチックだと最近知って驚いた。周りのほとんどの農家がこの肥料を使っているが、農業関係の会合でも話が出たことは一切ない」と語った。

 こうしてプラスチック殻は意識されないまま流出してきた。川や海の状況を調べている環境団体の代表は、県内の三大河川をはじめ百間川、笹ケ瀬川、倉敷川の下流の護岸や、島々を含む瀬戸内海の海岸に大量にたまっていることを紹介。「ペットボトルが漂着する場所には肥料殻も必ずある」と報告した。

 漁業者は「責任もって管理して、海に出さないようにしてもらわないと困る」と言う。

もう一歩先へ

 意見交換会は21日、海ごみ問題に取り組むNPO法人・グリーンパートナーおかやまが主催し、関係者や県議会、岡山市議会の議員ら約40人が参加した。

 農林水産省中国四国農政局生産技術環境課は「プラスチックの代替技術の確立にはまだ時間を要する。当面は田から流出させない対策が重要と考えている」と説明した。

 県農産課は今春、農家にチラシ20万部を配り、田から流出させないための水位調整、排水口へのネット設置といった流出防止策を農家に求めた。「おおむね賛同いただいていると考えている」と言う。

 それでも各地で流出しているのが実情だ。岡山市農林水産課は、用水路にネットを設置する試みが、ごみが詰まってうまくいかなかったことを報告した。

 会場からは「そこで立ち止まらず、流出防止へ何ができるか、もう一歩先を考えるべきだ」「田によって流出の有無があるのは何が違うのか、調べるのが行政の役割だ」といった声が出た。

地球環境の問題

 大きな焦点となったのが、肥料メーカーが進めている対策の是非だ。殻が早く崩壊して環境にいいとされる製品が開発された。殻は分解して自然に返るのか、それともプラスチックのまま崩壊して小さくなるだけなのか―という疑問がある。崩壊するだけなら解決にならないどころか、問題を見えなくして状況は余計に悪くなる。

 県は「メーカーからは分解すると聞いている」とした。農水省は「分解の定義もはっきりしておらず、どのように変化するのか分かっていない」と慎重な見解にとどめた。

 会場からは「分解するにしても数十年もかかるのでは意味がない」との見方も出て、今後行政が詰めていくべき課題だとされた。

 肥料殻問題全体についてNPO法人・里海づくり研究会議の田中丈裕事務局長は「地球環境の問題として、だれが悪いというのではなく、みんなで早期に解決することが求められる」と語った。

 プラスチック殻の肥料 1970年代から登場し、さまざまなタイプを多くの肥料メーカーが生産している。肥料成分が一粒一粒プラスチック殻で覆われ、「被覆肥料」とも呼ばれる。「一発肥料」といった名称も使われ、効果が長持ちして田畑での施肥作業を軽減することなどから広く普及し、全国の水田面積の6割で使われている。

■百間川で31日ごみ回収、参加募る

 大量のプラスチックごみが蓄積している百間川の中州(岡山市中区沖元)で、環境団体がごみの回収に乗り出す。31日に行う活動の一般参加者を募集している。

 中州は国道2号の南付近にある。国土交通省の管轄で橋でつながっている。木々や草の間に、ペットボトルや食品容器などのプラスチックを中心に上流からのごみが広範囲に漂着している。放置しておくと劣化し、世界的に問題視されているマイクロプラスチック(直径5ミリ以下)になって海に流出するなど、環境への悪影響が懸念される。

 ひどい状況を少しでも改善しようと、環境団体「釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収」が主催。午前8時半、清内橋バス停(同市東区光津)付近に設けた駐車場に集合し、午前10時まで行う。先着25人。夏休みの自由研究用に親子連れも可。長袖、長ズボンで、軍手や火ばさみの持参が好ましい。問い合わせは代表の平井雅明さん(090―7892―7398)。

(2021年07月25日 08時37分 更新)

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