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西日本豪雨災害から3年を迎えて 被災者支援制度の改善と課題

倉敷市真備町で行われた西日本豪雨に関する相談会に参加する大山弁護士=2019年1月
倉敷市真備町で行われた西日本豪雨に関する相談会に参加する大山弁護士=2019年1月
 西日本豪雨災害から3年が経過しました。本年も全国各地で豪雨災害が発生しています。そこで、この3年間で改善した被災者支援制度と残った課題について書いてみたいと思います。

 改善された点は言い換えると、最新の制度改正点です。現在、被災されている方や被災者支援をされている方にも参考になるので、お読みいただきたいです。

 まずは、「自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律」が成立しました。今までは、西日本豪雨などの大災害には特例法としてその災害毎に義援金差押禁止法が制定されており、大きな災害でも特例法が制定されなかった場合(北海道胆振東部地震(2018年9月)など)があったので大きな改善点と考えます。被災者支援弁護士としては、災害の度に義援金差押え禁止法の制定を提言していたので、この提言をしなくてよくなった分だけ被災者支援に時間を使うことができるようになりました。

 次に、被災者支援者の間で、「半壊の壁」とも言われていた災害によって半壊の被害を受けただけでは、被災者生活再建支援金を受け取ることのできなかった問題も、半壊被害を受けた世帯が加算支援金を最大100万円受け取ることができるようになりました。
しかし、罹災証明を受ければ申請できる基礎支援金ではなく、自宅再建の方法が決まってから受け取ることができる加算支援金しか認められなかったことや,金額が全壊の最大300万円と比べて低額であることは課題として残っています。

 災害救助法の応急修理ができる場合が拡大し、準半壊と呼ばれるようになった被害(損壊率10%以上 20%未満)でも利用できるようになりました。「応急」修理という名前にもかかわらず応急修理を使うと自宅が直ったとみなされて、仮設住宅に入れなかった問題も、半壊以上の損害で1ヶ月以上の修理が必要な場合には仮設住宅に入れる改善がありました。この改善でも、要件を満たせなければ仮設住宅に入れないですし、要件を満たして仮設住宅に入れたとしても供与される期間が原則6カ月と短かったりする課題は残ったままです。

 災害関連死について、災害関連死事例集が本年4月に内閣府から公開されるという大きな前進がありました。今までは、公開されている災害関連死の認定について争われた裁判例と報道されている事例しか参考にするものがなかったので事例集として公開されたことは大変大きな意義があります。ただ、公開事例が98事例しかないので、類似事例を見つけて災害関連死と認定できるか審査する際の参考にしたり、遺族の方が審査を申し立てる際の参考にしたりするにはまだまだ足りない数です。更なる公表と分析を国には行ってほしいです。

 大きな課題として残っているのは災害時における個人情報保護の問題です。先日の静岡県熱海市での土砂災害の際にも、安否不明者の氏名の公表が発災より2日後にはなされましたが、発災直後に公表されなかったのは、自治体が氏名公表と個人情報保護の観点を検討されていたからだと思います。個人情報の保護は重要ですが、人命救助の前では、人命が優先されるべきですので、災害発生から一刻も早く安否不明者の氏名の公表ができるように災害時の現場で考えるのではなく事前に国や自治体で検討していただきたいです。

 合わせて、被災された方の個人情報の共有を被災者支援にあたる組織や団体を超えて共有できる仕組みや法整備も進めていただきたいです。

 支援制度の共通の問題として西日本豪雨災害においてまさに直面している支援制度の申請期間の延長の問題があります。前回のコラムに書いた被災者生活再建支援金の加算支援金については倉敷市と高梁市は延長されましたが、岡山市や総社市などでは延長はまだ公表されていません。同じく西日本豪雨災害の被災地である広島県内の自治体でも加算支援金の申込み期限の延長はまだ公表されていません。

 倉敷市や高梁市でも加算支援金の申込み期限が延長されながらも、同様に被災された方の住宅再建に多く利用されている災害復興住宅融資の申込み期間は延長されていません。(この点については先日弁護士有志で提言をした際の山陽新聞記事をご覧ください)

 このように自治体毎に申請期間が延長されたりされなかったりするのは不公平です。制度毎に申請期間が異なってくるのは、支援が必要な被災者がいると判断して延期される制度(今回は被災者生活再建支援金)もあれば、他の制度(今回は災害復興住宅融資)で延期の必要な被災者はいないとして申請期間が延期されないという矛盾が生じてしまいます。公的制度の一番の強みは不公平や矛盾をできるかぎり生まない制度になっているはずであるのに、期限の延長に関してはその判断過程や理由が公表されずに災害の度に不公平や矛盾を多く生んでいますのでこの点については改善も求めます。

 災害が多発しているという悲しい事実も影響はしていますが、上記のとおり被災者支援制度は日本の他の制度に比べればかなり柔軟に改善されていますので、西日本豪雨災害を経験した岡山県民として、被災地より経験を発信してより良い被災者支援制度にしていきましょう。西日本豪雨災害の復興についても進んでいますが、まだまだ多くの方が生活再建の途中にあります。弁護士だけでなく様々な職種の方と連携して一人も取り残さない「人間の復興」を実現できるよう頑張りたいです。

     ◇

大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長を務める。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事を令和2年まで4年間務めた(現在は同財団監事)。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2021年07月21日 11時56分 更新)

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