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新たな避難情報 命守る行動につなげたい

 自治体の避難情報と住民の行動が伴わない実態があらためて浮き彫りになった。

 この梅雨期から新たな避難情報が運用されている。大きなポイントは、5段階の警戒レベルのうち危険度が2番目に高い「レベル4」について避難の勧告を廃止して指示に一本化したことである。これまでの勧告のタイミングで指示を出し、危険な場所から全員避難するとされた。

 梅雨前線の影響で、今月上旬に各地で大雨となり、避難指示の発令が相次いだ。しかし、実際に避難所へ行った住民はごくわずかだった。3日に約20万人に指示を出した神奈川県平塚市では143人、同じ日に約2万人に発令した京都市はゼロだった。7日に約20万人に指示した松江市も314人にとどまっている。

 岡山県内も7~9日に県北を中心に6市町村で計約7200人に発令され、避難所の利用者は約120人と対象の2%に満たなかった。別の場所に身を寄せた人もいたというが、あまりに少ない。大半が逃げていなかったのなら要因の分析が必要になろう。

 新たな情報は住民に早めの避難を促す狙いで、5月施行の改正災害対策基本法で導入された。従来はスムーズに移動できるよう時間的な余裕を持って勧告を出し、切迫度が増すと指示を発令していた。ただ、両者の違いが分かりづらく、逃げ遅れるケースが後を絶たなかったことから見直された。

 レベル4は「災害が発生する恐れが高い」状態となっている。避難情報の実効性を高めるためには、行政はその意味を住民に理解してもらい、発令と行動を結び付ける伝え方の工夫や周知に努めることが求められる。

 静岡県熱海市の大規模土石流災害では、市が避難指示を出さずに問題視された。土砂災害のように発生予測が難しいケースもある。「空振り」を恐れず、適切に判断できるよう災害情報の収集や分析、関係機関との連携といった平時からの備えも重要になる。

 住民の側も、素早い反応が必要だ。災害時には「正常性バイアス」が生じやすいとされる。身に危険が迫っても心の平静を保とうと、事態を過小評価する心理状態である。3年前の西日本豪雨の際、倉敷市真備町地区でも「自分は大丈夫」などと4割超が自宅にとどまった。多くの住民が逃げ遅れ、犠牲となったことを教訓とせねばならない。

 安全な避難行動のためにはまずはハザードマップで自宅周辺のリスクを把握することから始めたい。深夜など時間帯によっては避難所に向かわず、高層階にとどまるのも選択肢の一つとなる。内閣府が公表している「避難行動判定フロー」などを使い、事前に逃げるタイミングや避難先を決めておくことが不可欠だ。

 災害は激甚、頻発化している。官民がそれぞれ危機感を共有し、避難情報を「命を守る行動」につなげたい。

(2021年07月21日 08時00分 更新)

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