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教員免許の更新制 廃止し働き方改革進めよ

 教員の働き方や経済面で負担が生じていることは明らかだろう。弊害が目立つなら、できるだけ早く廃止の方針を打ち出すべきだ。

 10年ごとの講習を義務付けた「教員免許更新制」である。教員の多忙化の一因になっているとの指摘を受け、萩生田光一文部科学相が3月、中央教育審議会に抜本的な見直しを行うよう諮問した。

 文科省は廃止の方向で検討しており、早ければ来年の通常国会で必要な法改正を目指すという。ただ、与党の一部に存続を求める意見があり、曲折も予想される。

 更新制は第1次安倍政権のもとで法改正され、2009年度から導入された。幼稚園や小中高校などの教員免許に10年の期限を設け、期限前の2年間のうちに大学の教育学部などで計30時間以上の講習を受けることを義務付けた。受講しなければ免許は失効し、失職する。

 数万円の受講料や交通費は教員の自己負担である。長時間労働の合間を縫い、土日や夏休み期間に受講している。各教育委員会も従前から独自に研修を行っており、教員はこうした研修に加えて更新講習を受けている。多忙化に拍車を掛けているのは間違いないだろう。

 見逃せないのは、学校現場の教員不足にもつながっていることだ。更新期限を迎える前に教員が早期退職する動機になっていると指摘されている。教員免許を持っていても民間企業などに勤めている場合は更新せずに失効している人が多く、産休や育休などの代替教員の確保が難しくなっている。教員が更新を忘れて失職する「うっかり失効」も各地で相次ぎ、年度途中で担任が交代する事例もあった。

 文科省が今月公表した現役教員への調査では、6割近くが更新講習に不満を持っていた。自由記述では「制度を廃止すべきだ」「意義を感じない」との意見が目立った。

 制度導入から10年以上たって目立つのは弊害ばかりだが、いずれも導入前から懸念されていたことである。更新制は「指導力不足の教員がいる」との批判の高まりを受け、政治主導で進められた。政策のどこに問題があったのか、文科省はしっかり検証し国民に示すことが求められる。

 もちろん、教育の質を高めるために教員の研修は必要だ。文科省はオンラインなどを通じた研修機能の強化を検討しているという。オンラインなら遠方まで出掛けなくて済み、負担軽減につながる可能性がある。ただ、本来重要なのは教員の主体的な学びであり、そのゆとりを生み出すために学校現場での働き方改革を着実に進めることが欠かせない。

 長時間労働の実態が広く知られ、教員の志望者が減っている。教員という仕事を魅力的なものにしていかねばならない。更新制の廃止が実現すれば、学校現場が変わるというメッセージにもなろう。

(2021年07月20日 08時00分 更新)

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