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【記者が行く】岡山、総社市境の「宇宙上人」碑 近くに堂構え暮らした僧

岡山市・足守地区と総社市の境界付近に立つ「宇宙上人之碑」
岡山市・足守地区と総社市の境界付近に立つ「宇宙上人之碑」
石碑の近くに残る、堂が立っていたとみられる跡
石碑の近くに残る、堂が立っていたとみられる跡
神護寺にある宇宙上人の父・舜惠の墓。右は北野住職=吉備中央町吉川
神護寺にある宇宙上人の父・舜惠の墓。右は北野住職=吉備中央町吉川
宇宙上人にまつわる幼少期の思い出を振り返る遠藤さん
宇宙上人にまつわる幼少期の思い出を振り返る遠藤さん
 岡山市北区足守地区と総社市にまたがる山の中で、「宇宙上人之碑」と刻まれた石碑を見つけました。「宇宙」という単語にロマンを感じたのですが、どのようないわれがあるのでしょうか?〈岡山市南区、女性(50)〉

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 女性に案内してもらい、足守小(岡山市北区足守)近くの山道を歩くこと約20分。道の脇に高さ約1・5メートルの四角柱の碑が立っていた。正面には確かに「宇宙上人」の文字。この山道は愛好者による縦走大会で使われており、女性は参加した際に碑に目を留めたという。

 碑にはほかに、宇宙上人を指すとみられる「並川舜憲師」なる名前と建立日と思われる「昭和二十二年七月十一日」の日付も彫られていた。

 ■ ■

 いざ調査開始。まずは高僧を意味する「上人」を手掛かりに周辺の寺を訪ねてみることに。すると近くの東漸寺(同所)に同姓同名の人の墓があることが判明した。碑と同じ年月日に亡くなっており(享年73歳)、同一人物の可能性が高そうだ。

 しかし、名誉住職を務める橋本高諄さん(66)によると、歴代住職や檀家(だんか)には該当の人物は見当たらず、なぜここに墓があるのかも不明という。

 いきなり手詰まり感が漂う中、寺の檀家で郷土史愛好家の柏野忍さん(77)=同市北区=が新たな情報をくれた。柏野さんは3年ほど前、同じように「宇宙」という語に引かれ舜憲について調べており、父親の墓が神護寺(岡山県吉備中央町吉川)にあるとのこと。

 早速足を運び、住職の北野恵祥さん(79)に話を聞くと、舜憲の父・舜惠は同寺の住職だったことが分かった。父の後を追って仏道に入ったのだろうか。

 ■ ■

 ルーツをたどった次は、別の角度から取材を進める。実は碑の近くには瓦などが散乱し、建物が立っていたとみられる跡が残っていた。当時を知る人を探すと、幸いなことに見つかった。

 「そこにお堂があって、舜憲さんが住んでいました」

 そう証言するのは、遠藤和子さん(88)=同市北区。亡くなった母親が舜憲と交流があり、遠藤さんも幼少期に堂に米や野菜を持って行っていたという。

 「『宇宙上人の名をもらった』と母に話していたのを聞いた」とも教えてくれたが、なぜ宇宙なのか、だれが碑を建てたのかなど、それ以上のことは判然としなかった。

 その後も多くの人に尋ねてみたが、新しい情報は得られず、今回の取材はこれで終了。僧侶だった父に続いて仏の道を歩み、山中に堂を構えて生活、73歳で亡くなった―。そんな輪郭はぼんやりと浮かび上がるも、宇宙上人の実像に迫ることは残念ながらできなかった。

 柏野さんの調査も同様に途中で行き詰まったそう。何かご存じの方はぜひご教示ください。

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(2021年06月28日 05時00分 更新)

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