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ヤングケアラー 国が支援の具体策を示せ

 病気や障害のある家族や、幼いきょうだいの世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」について、厚生労働省と文部科学省が支援に乗り出す。両省のプロジェクトチーム(PT)が先月、報告書をまとめた。

 家庭の問題とみられてきたヤングケアラーを顕在化させたのは評価できる。だが、どうすれば柔軟に介護や子育てサービスを利用できるかや、子どもが「介護力」として扱われない方策などは十分に示されたとは言い難い。自治体任せでは支援に濃淡ができる恐れがあり、国がさらに具体策を示してもらいたい。

 ヤングケアラーが課題となっている背景には高齢化に加え、少子化で家庭の人手が減ったことがあろう。心配なのは学業や進路への影響である。この言葉が生まれた英国では1980年代に研究が始まり、支援策が整えられたという。参考にしてほしい。

 PTの報告では、支援団体などによるオンラインを含めた悩みの相談体制を整えるとともに、4月に公表した初の実態調査で割合が高かった、幼いきょうだいをケアする子どものいる家庭に対する支援の在り方を検討する。当事者の悩みは外から分かりづらく、研修などを積んだ人が相談に応じることが大切だ。

 問題の早期発見につなげるため、自治体の現状把握を促す。来年度から3年間は社会的な認知度向上の集中取り組み期間として、中高生の認知度5割を目指す。

 これは、実態調査に回答した中学2年生5558人、高校2年生7407人のうち、8割以上が「ヤングケアラーという言葉を聞いたことがない」と回答したためだろう。

 そもそも当事者自身が家族のことだから世話するのが当然だと考え、平静を装うこともある。その一方、社会で孤立することは、実態調査からもうかがえた。

 世話をする家族がいる中学生は5・7%、高校生は4・1%と、クラスに1、2人いる計算だ。決して珍しくないが、当事者の6割超が誰にも相談したことがなかった。

 支援に向けては学校での気づきに期待したいものの、教員も手探りの状態だろう。とはいえ、生徒から事情を説明されても困難を理解せず、子どもに不信感を抱かせるようなことがあってはならない。

 問題の発見には、生徒が欠席や遅刻した際にしっかり事情を聴き、家庭環境を把握することが始まりとなる。根本的な解決には家族全体へのケアが欠かせず、スクールソーシャルワーカーや自治体の福祉担当者らと連携して、適切な公的サービスにつなぐ仕組みづくりが求められる。

 実態調査では、世話の対象はきょうだいが高校生の場合で44・3%を占めて最も多く、父母は29・6%、祖父母は22・5%いた。介護は終わりが見えず、18歳以降も悩み続ける人も多い。切れ目のない支援が必要だ。

(2021年06月01日 08時00分 更新)

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