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岡山の聖火ランナー 複雑な思い 公道中止を県が正式発表

交通規制を知らせる看板に、中止の案内を張る岡山市職員=同市北区柳町
交通規制を知らせる看板に、中止の案内を張る岡山市職員=同市北区柳町
 岡山県は12日、新型コロナウイルスの感染急増を受け、県内で19、20日に予定されている東京五輪聖火リレーを公道では実施せず、無観客の式典に替える方針を正式に発表した。本番までちょうど1週間。「残念」「それでも役割を果たしたい」とランナーは複雑な思いを口にした。

 県内の聖火リレーは12市町の計約32キロを170人以上が走る予定で、県実行委は53人を選考していた。その一人、車いすランナーの栂安朋子さん(59)=吉備中央町=は「介助などで日ごろお世話になっている人への恩返しのためにも走りたかった。感染状況を考えれば仕方がない」と悔しさをにじませた。

 県実行委枠の最高齢として奈義町を走る予定だった植月佐広さん(80)=勝央町=は「感染者が比較的少ない県北部ではできると期待していただけに、残念だ」と肩を落とした。

 1964年東京五輪でも聖火ランナーを務めた神達靖久さん(74)=玉野市=は「形式は異なるが、人生で2度も大役に選ばれたこと自体が名誉」と受け止める。一方で、岡山陸上競技協会専務理事として地元の競技振興に取り組む立場から「子どもたちが聖火を目の当たりにする機会がないのは惜しい」とした。

 2018年の西日本豪雨からの復興への思いを込めて準備していたのは、自宅が被災した総社市立総社中3年浅沼涼さん(14)。「被災後に地域を出て、まだ帰れない人もいる。元気な姿を見せたいと思っていたのに」という。

 県は19日に岡山城下の段(岡山市)、20日に津山中央公園グラウンド(津山市)で式典を開き、ランナーが走らずに聖火のみを引き継ぐ「トーチキス」などを実施する方針だ。

 1980年モスクワ五輪で陸上男子400メートル障害の代表に選ばれながら、日本のボイコットにより出場がかなわなかった長尾隆史さん(63)=倉敷市=は、「(式典で)聖火を手にできるだけでもありがたいと思いたい」と自らに言い聞かせるように話した。

 バレーボール女子で五輪2大会に出場し、2012年のロンドンで銅メダルに輝いた山口舞さん(37)=岡山市=は安全が前提とした上で「暗い世の中だからこそ、スポーツで少しでも元気や希望を持ってもらえる大会になれば」と、7月の五輪開幕を無事に迎えることを願った。

(2021年05月12日 20時22分 更新)

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