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みどりの日 自然の恩恵を活力の源に

 初夏の風に揺れる木々の若葉がみずみずしい。きょうは「みどりの日」。改めて自然の恩恵のありがたさに思いを巡らせたい。

 新型コロナウイルスの脅威が世界を覆っている。日本でも感染の“第4波”が到来。感染力が強いとされる変異株も急速な広がりを見せ、東京都や大阪府などでは3度目の「緊急事態宣言」を余儀なくされた。

 感染への不安に加え、行動の制限や外出の自粛などでストレスにさらされる忍耐の日々が続きそうだ。そうした厳しい時こそ、心身のリフレッシュの重要さが増す。

 効果的とされるのが森林浴だ。散策で適度に体を動かすとともに、マイナスイオンなどの癒やし効果も言われる。美しい景観を眺め、鳥の声や風の音を聞くなど五感を刺激できるのも魅力だ。感染対策に注意しながら楽しみたい。森に行かなくても、身近にある草木に関心を寄せるだけで気持ちは安らごう。

 「緑」が人間社会にもたらす恩恵はそれだけではない。日本国土の約7割を占める森林の営みは、材木の供給や樹木の保水力による水源かん養、治山、二酸化炭素(CO2)の吸収、生物多様性を育むなどの役割を担ってきた。

 だが、植林した森の手入れが足りず荒廃し、機能の衰えが指摘される。

 日本は多くの国と同様に、温室効果ガスの排出量を2050年に「実質ゼロ」にする目標を掲げている。達成には排出自体を減らすとともに、吸収量を増やす必要がある。森林の機能回復へ、計画的管理や担い手づくり、関連産業の育成などが急がれる。

 新型コロナのような新興感染症の多くは、野生生物を介して人に感染する「人獣共通感染症」とされる。その発生には、人間による自然への圧力が関与しているという。

 大きい原因の一つが南米などでの熱帯林の破壊だ。人類の経済発展に伴う伐採や農地開発などで人と動物の距離が縮まり、感染リスクを高めている。荒廃によるCO2の吸収力低下が温暖化を進め、それがさらなる森林破壊を招く悪循環を断ち切りたい。

 遠い国の話と軽視してはならない。総合地球環境学研究所の研究者らの調査によると、人間は日々の生活や消費行動などを通して、意識しないままに世界の森に害を及ぼしているという。

 チームは衛星画像などから森林の失われた地域や面積、伐採後にできた農地で栽培された作物などを割り出し、その製品が最終的にどの国の消費者に届いたかを調べた。その結果、日本人は東南アジアやアフリカの森の木を、1人当たり年に2本ずつ切り倒している計算になるそうだ。

 人類にとってかけがえのない森林の機能をどう守り、育んでいけばよいのか。「みどりの日」を、一人一人が自らの意識や行動も含めて問い直す契機にしたい。

(2021年05月04日 08時00分 更新)

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