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憲法記念日 国会議論は急がず慎重に

 日本国憲法はきょう、施行から74年になる。改憲の是非を問う国民投票法の改正に向けて国会審議が大詰めになる中で迎える記念日である。拙速な議論にならぬよう、慎重な審議が必要な時だ。

 憲法を改正するためには、衆参それぞれ3分の2以上の国会議員の賛成により、国会が発議。国民投票で有効投票の過半数の承認を得る必要がある。国民投票は主権者となる国民が意思表示をする重要な機会となる。

 審議中の国民投票法改正案は、投票日当日に駅や商業施設でも投票できる「共通投票所」の導入や、期日前投票時間の弾力化など7項目について、公選法の規定にそろえる。有権者の利便性向上につながることから与野党の意見に大きな隔たりはない。

 対立しているのは、政党がテレビやインターネットなどを使って行うCMの扱いだ。立憲民主党や共産党は、資金力に勝る政党が大量のCМを流して世論をゆがめ、投票を有利に進めると危惧する。その心配は無視できまい。

 CM規制は表現の自由を侵害しかねない問題であり、規制が難しいとされる。立憲民主などは、規制を確約しないと審議に応じられないとしてきたが、審議を急ぎたい与党との間で妥協点が見つけられれば、大型連休明けにも衆院の憲法審査会で法案が採決される可能性が出てきた。

 肝心なのは改憲案の中身である。自民党は3年前、安倍晋三前首相の下で4項目の改憲案をまとめている。9条に自衛隊の存在を明記することや、災害などの非常時には法律と同じ効力を持つ政令を内閣が制定できる緊急事態条項を盛り込むこと―などが含まれている。

 中国海警局の大型船が連日のように、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入したり、接続水域に出没する。領土防衛について自衛隊の役割強化を求める声が一部にあるのは確かだ。新型コロナウイルスの感染拡大を緊急事態ととらえ、国民の私権制限を強化して感染を抑制するためには、緊急事態条項が必要だという指摘もある。

 ただ、こうした現状を後追いした改憲議論では、拙速に陥りかねまい。すぐに対応しなければならない事態と、国づくりの根幹に関わる憲法改正の議論を、混同することがあってはならない。

 自民党は党の改憲原案について、改めてまとめる予定で、国民投票法改正案が成立してから、党内議論に着手することにしている。これまでの改憲案について党内の意見が集約できているわけではない。国民投票の手続きが整ったことを大義名分として、議論を先に進めたいとする思惑も透けて見える。

 国民投票法改正案は自公と維新が3年前に提出して以来、長く継続審議とされてきた。中身の議論はこれまで以上に慎重であるべきだ。未来に禍根を残してはならない。

(2021年05月03日 08時00分 更新)

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