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B型肝炎判決 救済拡大へ国は対応を

 国が進めた集団予防接種が原因となったB型肝炎の被害について、最高裁が救済対象を広げる判断を示した。国は救済制度の枠組みを見直すなど、対応を急ぐ必要がある。

 乳幼児期に受けた集団予防接種が原因でB型肝炎を発症し、いったん症状が治まった後に再発した福岡県の男性2人が、国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決があった。

 被害の発生から20年が経過すると損害賠償の請求権が消滅するとした民法の「除斥期間」を巡り、起算点が最初の発症時か、再発時かが争点となった。

 二審の福岡高裁は、提訴の時点で最初の発症から20年以上が過ぎているとして請求を退けた。これに対し、最高裁は再発の仕組みが医学的に解明されておらず、最初の発症時点で損害賠償を求めるのは不可能だとして、再発時を起算点とした。審理は賠償額算定のため、高裁に差し戻されることになった。

 全国B型肝炎訴訟弁護団によると、同様の訴えをしている再発患者はほかに100人以上いる。今後の審理に影響を与えることは間違いない。

 1948年施行の予防接種法に基づき、各地で集団予防接種が行われたが、現場では注射器の交換が徹底されない状態が続いた。注射器の使い回しによる感染の危険性が指摘されていたにもかかわらず、国が交換を義務付けたのは88年で、対応を怠った国の責任は大きい。

 最高裁は2006年の判決で国の責任を認め、12年に施行された特別措置法で救済の枠組みが整えられた。被害者は裁判所に提訴して国と和解すれば、症状に応じて給付金を受け取れる。慢性肝炎の場合、給付金は1250万円となる。

 しかし、現在の枠組みでは発症から提訴までの期間が20年以上なら、除斥期間を根拠に給付金が4分の1以下に減額されている。当初の基本合意の際、国が給付金の支出が巨額になるのを防ぐために除斥期間による線引きを強く主張し、当時の弁護団も早期解決を優先して受け入れた経緯がある。

 「発症から20年」という時間による線引きは被害の実態に即しておらず、再発患者を苦しめてきた。最高裁は今回の判決で「迅速で全体的な解決を図るため、救済に当たる国の責務が適切に果たされるよう期待する」との補足意見を付け、国の対応を促した。国は真摯(しんし)に受け止め、全面解決に向けて関係者との協議を始めるべきだ。

 政府は今国会に、特措法の請求期限を27年まで延長する法案を提出している。救済の対象者は最大で約45万人と推計されているが、21年1月末までに提訴した人は約8万5千人にとどまる。感染に気付いていない人、集団予防接種による被害と認識していない人もいるのではないか。国は積極的に救済制度の周知を図らねばならない。

(2021年05月02日 08時05分 更新)

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