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映画「とんび」瀬々監督に聞く 岡山県南ロケ 人のつながり再確認

「人とのつながりを見つめ直し、感じてもらいたい」と話す瀬々監督
「人とのつながりを見つめ直し、感じてもらいたい」と話す瀬々監督
映画「とんび」のロケが行われた浅口市金光町の商店街((C)2022「とんび」製作委員会)
映画「とんび」のロケが行われた浅口市金光町の商店街((C)2022「とんび」製作委員会)
浅口市でのロケに臨む阿部(右)と北村((C)2022「とんび」製作委員会)
浅口市でのロケに臨む阿部(右)と北村((C)2022「とんび」製作委員会)
 津山市出身の作家重松清のベストセラー小説を映画化した「とんび」の製作が進んでいる。高度経済成長の活気に満ちた時代の中、紡がれる父と子の絆の物語は、重松の自伝的な要素もあるという。岡山県南一帯で行われたロケの現場で、瀬々敬久監督に作品の魅力を聞いた。

 昨年11月。浅口市金光町の商店街は三輪トラックが土煙を上げ、かっぽう着姿の買い物女性が店先をのぞき込む、昭和30年代の情景に様変わりした。愛妻を亡くした運転手のヤスは、この町で周囲の人々の助けを受けながら、一人息子のアキラに愛情を注ぎ育て上げる。

 「隣近所がみんな知り合いだった頃の、伝統的な人情話」と瀬々監督。商店街には、そうした古きよき時代の風情が漂い「昔ながらの街並みが残っていてよかった」と頬を緩める。

 目を見張るのが豪華な配役だ。押しも押されもせぬ実力派俳優、阿部寛が主役のヤス、人気の若手北村匠海がアキラを演じる。原作は過去2度、テレビドラマ化されているが、瀬々監督は「チャーミングでパワフルな阿部さんならではのヤス。平成生まれの北村さんは新たな感覚でアキラを演じてくれた」と初の映画版の手応えを語った。

 ロケでは、大人になり、結婚を認めてもらいに帰郷したアキラと、素直に祝福できないヤスを巡る終盤の重要シーンも撮影された。商店街で祭りが繰り広げられ、地元住民約200人もエキストラとして出演し、物語を盛り上げる。監督も「地域の人々も楽しんで参加してくれた。作品が活性化につながれば」と喜んでいた。

 原作には穏やかな瀬戸内海の風景など、岡山を彷彿(ほうふつ)とさせる情景がいくつも登場する。撮影は約1カ月間にわたり、倉敷市の沙美西海岸や笠岡市の金浦地区などでも行った。「すぐ近くに島が見える箱庭的な瀬戸内の地形が、温かみを感じさせる。重松さんの故郷を描いたであろう原作の世界観に合う」

 重松やアキラと同世代で物語に親しみを覚え、迷わず監督を引き受けたという瀬々。「映画の中で『アキラはみんなで育てた』というせりふがあるが、時代が進むにつれ、地域の共同体はなくなり、人とのつながりも薄れてきていると感じる。人が一緒に生きることの素晴らしさを再確認したい」と語った。

 映画は2022年に公開予定。

 ぜぜ・たかひさ 1960年生まれ、大分県出身。岡山県在住の夫妻をモデルにした映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017年)や「64 ロクヨン」(16年)「糸」(20年)など数々のヒット作を手掛ける。

(2021年03月09日 16時07分 更新)

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