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官僚の違法接待 第三者組織で解明進めよ

 なぜ利害関係者から高額の接待を受けたのか。それが放送行政にどんな影響を与えたのか。疑惑の核心部分は解明されておらず、このままでは国民の疑念は拭えまい。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」からの接待問題で、総務省は国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反した違法接待だったと認定し、幹部9人を減給や戒告の懲戒処分とするなど計11人の処分を発表した。

 総務省の調査によると2016~20年に、事務次官級の総務審議官をはじめとする幹部ら計13人が延べ39件の接待を受けていた。会食の半分以上に菅首相の長男が出席していた。費用はほぼ毎回、東北新社側が支払い、同社側の負担は60万円を超す。

 接待を受けた中には、菅首相の信任が厚いとされる山田真貴子内閣広報官も含まれ、総務審議官だった当時、1回の会食で7万円超の接待を受けていた。山田氏は総務省を退官して特別職に就いているために総務省の処分対象からは外れたが、給与月額の6割を自主返納するとしている。

 国会審議への影響を回避するため、総務省は処分発表を急いだとみられる。しかし、調査は不十分で、これで幕引きとするわけにはいかない。

 国会に招致された山田氏は東北新社との会食について「一般的な懇談で、働き掛けはなかった」「利害関係者であるかどうかのチェックが十分ではなかった」などと釈明したが、額面通りには受け取れない。放送行政の許認可に関わる総務省幹部が、日常的に特定の事業者から接待を受けていたことが異常である。

 菅首相の長男は衛星放送を手掛ける東北新社の子会社の役員も務め、接待は衛星放送の認可・更新時期に集中していた。処分を受けた総務省幹部は同業他社との会食は否定しており、東北新社への特別扱いが際立つ。徹底した調査が求められよう。

 武田良太総務相は、副大臣を長とする検証委員会で調査を続ける方針を示したが、首相の長男が絡む案件であり、内部調査に限界があるのは明らかである。放送行政がゆがめられた事実の有無を確認するには、独立した第三者組織で調査を進めるべきだ。

 総務省の幹部らが処分された翌日には、農林水産省が倫理規程に違反したとして事務次官を含む幹部6人の処分を発表した。鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表と吉川貴盛元農相との会食の席に同席し、業者側が飲食代を支払ったという。

 処分の根拠となっている国家公務員倫理法は旧大蔵省の接待汚職事件などを受け、2000年に施行された。官僚接待が後を絶たない現状をみると、倫理規程は形骸化しているのではないかと疑わざるを得ない。民間企業との接点が多い省庁はほかにもある。行政の公平性を損なう行為がないか、全省庁を対象に調査すべきではないか。

(2021年02月27日 08時00分 更新)

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