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日増しに明るくなってきた空を仰…

 日増しに明るくなってきた空を仰ぎ、梅の花が咲き誇っている。こんなに心地よい空間があったとは。みずみずしい香りを吸い込んで樹間を歩いた▼岡山市中区湊の小高い所にあるその梅園は、持ち主が高齢になったために何年も放置されていたそうだ。市内で自然食品店を営む近藤英和さん(43)と瀬戸内市で野菜の有機無農薬栽培に取り組む仲間が管理を引き受け、昨年、再生に挑んだ▼枝は野放図に伸び放題。草が茂り、つるが巻き付く。手作業でこつこつと約270本を整え、初夏に完熟した実で梅干しを作った。地域で作物を育て、責任を持って加工して売る。何年も思い描いてきた事業の第一歩という▼実現できたのは意外にもコロナ禍の影響ではないか、と近藤さんはみている。人や物の往来が不便になり、暮らしの足元を見つめ直した人は多い。「里山を守って恵みをいただく。そんな簡素な営みが見直されたと思う」▼クラウドファンディングで資金を募ると、収穫の喜びを共有したいという応援が全国に広がった。出資者には初漬けを贈る。不ぞろいで小傷もあるが、おいしさがぎゅっと詰まった自信作だ▼いずれは観梅会や収穫体験など人と人が交わる場も作りたいと夢は膨らむ。〈白梅の空は産湯の匂かな〉石母田星人。新しい季節、新しい時代の温かな兆しに、心が弾む。

(2021年02月26日 08時00分 更新)

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