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農林水産物の輸出 実効性ある戦略で拡大を

 農林水産省が2020年の農林水産物・食品の輸出額(速報値)をまとめた。前年比1・1%増の9223億円となり、8年連続で過去最高を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、海外の外食需要が低迷する中、鶏卵やコメといった主に家庭で消費される品目が伸び、輸出額全体を引っ張った。

 農産物の輸出拡大を巡っては、政府が昨年、品目ごとの具体的な実行戦略を策定するなど取り組みが本格化している。国内では少子高齢化や人口減少などに伴い、需要の先細りが懸念されているだけに、官民が連携して農産物の輸出を増やし、産地の活性化や農林水産業の振興につなげてほしい。

 輸出品目別では、鶏卵は2・1倍の45億円、コメが15・0%増の53億円などとなり、「巣ごもり需要」を背景に増えた。一方で、牛肉が2・7%減の288億円となるなど外食向けを中心に振るわなかった。国・地域別では、香港や中国、ベトナムなどアジア向けが堅調に推移した。

 農産物の輸出拡大を目指して政府は昨年11月、実行戦略を取りまとめた。日本が強みを持つ牛肉やブリ、日本酒など27品目を「重点品目」に指定し、国・地域別の目標金額を定める。その上で、海外需要に応じた品目ごとの輸出産地を設定し、資金供給や技術指導などで集中的に支援することが柱となっている。

 具体的には、「和牛」として人気が高い牛肉は、九州や北海道などを輸出産地とし、香港や米国向けなどを軸に19年に297億円だった輸出額を25年に約5倍の1600億円に引き上げる。

 ブドウでは、好評のシャインマスカットに加え、贈答用として定着しているピオーネや新たな品種の供給を拡大し、香港や台湾など向けを中心に25年の輸出額を19年の約4倍となる125億円に増やす計画を打ち出した。

 岡山県内では、ブドウと桃が輸出産地として選ばれた。鮮度保持機能を備えた貯蔵施設の整備や、他品目の果実の輸出に取り組む産地との連携による国産果実の通年輸出といった施策の展開が見込まれている。

 実行戦略で注目されるのは、重点品目ごとに生産、流通、輸出事業者が連携した組織をつくり、量や規格、価格など輸出先のニーズや規制に応じた戦略を立てて販売を強化することだ。官民が一体となって効果的な戦略を練り上げ、輸出促進につなげることが求められる。

 輸出増に向けては、東京電力福島第1原発事故から続く日本産食品の輸入規制の解消も大きな課題である。事故後、54の国・地域が設けた規制は順次、撤廃されてきたが、今も中国や米国など15カ国・地域で続いている。輸出促進にとって障壁となる規制の解消へ向け、政府は粘り強く交渉を続け、丁寧に安全性を訴えることが欠かせない。

(2021年02月25日 08時00分 更新)

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