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藤原審爾の未発表「武蔵」見つかる 備前ゆかり作家、25日から公開

 ふじわら・しんじ 東京都生まれ。備前市で父方の祖母に育てられた。旧制閑谷中(現岡山県立和気閑谷高)を経て青山学院高商部(現青山学院大)に進むが、結核で中退。岡山で詩人の永瀬清子らと文学活動を展開し、1947年に鏡野町の奥津温泉をモデルにした「秋津温泉」で注目され上京。52年「罪な女」で直木賞を受賞した。純文学から娯楽、社会派小説まで幅広く手掛けた。
 ふじわら・しんじ 東京都生まれ。備前市で父方の祖母に育てられた。旧制閑谷中(現岡山県立和気閑谷高)を経て青山学院高商部(現青山学院大)に進むが、結核で中退。岡山で詩人の永瀬清子らと文学活動を展開し、1947年に鏡野町の奥津温泉をモデルにした「秋津温泉」で注目され上京。52年「罪な女」で直木賞を受賞した。純文学から娯楽、社会派小説まで幅広く手掛けた。
 小説「秋津温泉」などで知られる備前市ゆかりの直木賞作家藤原審爾(1921~84年)が晩年取り組んだ、剣豪宮本武蔵を題材にした未発表小説の原稿が17日までに見つかった。原稿は手書きで200字詰め原稿用紙135枚。タイトルは記されていないが、出生の地とされる美作地方を舞台に武蔵の幼少期が描かれており、小説の書き出し部分とみられる。備前市歴史民俗資料館(同市東片上)で25日始まる生誕100年展で公開される。

 原稿は、藤原と内縁関係にあった女性の親族が遺品整理中に発見し、2018年12月に同資料館へ寄贈した。同資料館によると、所蔵する藤原の草稿と比べたところ、字体が一致。藤原が作家吉川英治の小説「宮本武蔵」とは違う武蔵像を―と自宅に“武蔵部屋”を設けて資料を集め、ライフワークを公言して長年構想を練っていたことはよく知られ、全5巻の予定で亡くなる3年ほど前から執筆していたという。

 1枚目の冒頭は<初念>と記され、<夜半、美作の深い山々の中で、風が興った>という一文で始まる。美作の秋の情景を織り交ぜながら、武芸者の父や母から愛されなかった8歳の武蔵が天下一の剣法者を夢見る姿が描かれる。最愛の姉との別れにうろたえ、涙を流し、父の高弟から稽古の許しをもらえば「ほんと?」と喜ぶ武蔵は、子どもらしさにあふれる。

 調査した岸奈都子学芸員は「人物描写に定評のあった藤原らしい小説。集大成として最後に取り組んだ作品の一端がうかがえる貴重な資料だ」と話している。生誕100年展は3月31日まで、月曜と21日休館。入館無料。

 藤原作品に詳しいノートルダム清心女子大の綾目広治教授(日本近代文学)の話 藤原は同郷の直木賞作家柴田錬三郎の「決闘者 宮本武蔵」も意識したはず。求道者的な吉川版、元来の強者として描く柴田版とは視点を変え、普通の少年の成長を丹念に描きたかったのではないか。完成していれば、素晴らしい作品になったに違いない。

 秋津温泉 岡田茉莉子の100本目の出演映画。岡田自ら映画をプロデュースし、監督(吉田喜重)を指名したことも話題を呼んだ。このロケがきっかけで岡田と吉田は結婚した。備前市で少年時代を過ごした直木賞作家藤原審爾の小説が原作。奥津温泉ではその後も、他の映画やテレビのロケが何度か行われている。

(2021年02月18日 07時01分 更新)

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