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下肢障害の女性 投票権巡り提訴へ 岡山県知事選で郵便投票できず

「訴訟を通じて郵便投票の在り方を問いたい」と話す女性
「訴訟を通じて郵便投票の在り方を問いたい」と話す女性
 昨年10月の岡山県知事選で、障害等級の違いにより郵便投票制度が利用できなかったのは、憲法が保障する法の下の平等に反しているとして、脚が不自由な岡山市の40代女性が29日にも、国に損害賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こす。車がないため投票所に行けなかったと言う女性。身体障害者4級の認定を受けているが、公選法はより重度の等級のみにしか制度の利用を認めておらず、「訴訟を通じて制度の在り方について問題提起したい」と話す。

 訴えなどによると、女性は約20年前、車を運転中に対向の車と正面衝突、大腿(だいたい)骨や腕の骨を折る重傷を負った。両下肢に機能障害が生じ、脚を引きずりながらでしか歩くことができず、長距離の歩行や階段の上り下りが難しくなった。現在は週2回ヘルパーの訪問を受けて生活し、生活保護費を受給しているため車は所持していないという。

 10月の知事選では「障害者福祉の充実を進めてくれる候補に一票を投じたかった」と話す女性。自宅から最寄り駅までは約1キロの距離があり、電車などで投票所へ行くことは困難だとして郵便投票を希望したが、岡山市選管に「身体障害者4級では利用できない」とされ、投票機会を逸したとしている。

 女性のような両下肢の障害は重い方から1~7級の等級があり、公選法の施行令は郵便投票の利用を1級か2級の認定を受けた有権者と定めている。対象を1、2級のみとしている理由について、制度を所管する総務省の担当者は「かつて相次いだ不正を防ぐ目的がある」と説明する。

 そもそも郵便投票は1947年、病気や障害で投票所に行くことが困難な人のための特例措置として地方選挙に適用され、翌48年には国政選挙にも認められた。ただ、51年の統一地方選で病気と偽っての在宅投票や第三者による成り済ましが続発し、52年にいったん廃止された。その後、選挙権の行使が困難となった在宅の重度障害者らから復活を望む声が高まり、75年に対象者を絞った現行の制度になったという。

 女性はこうした経緯を踏まえ、「1、2級であっても不正は起こり得る。等級によって一律に利用の可否を決めることに正当性はない」と主張。選挙権の行使が侵害されて精神的苦痛を受けたとして、国に約150万円の損害賠償を求める方針だ。

 九州大法学部の南野森教授(憲法学)は「投票権は民主主義の根幹をなす重要な権利。女性の訴えは、利用対象外の障害者等級でもさまざまな事情で投票所に行けないケースがあるという当事者ならではの視点で、現行法の問題点を浮き彫りにしていると言える」と指摘する。

(2021年01月28日 08時00分 更新)

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