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案里被告に有罪 政治不信は増すばかりだ

 2019年の参院選で、広島選挙区の地元議員らを買収したとして公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 夫で元法相の衆院議員克行被告と共に、現職の国会議員夫妻が起訴された前代未聞の事件である。民主主義の根幹である選挙の公正を損ない、政治への信頼を失墜させた罪はあまりにも重い。

 検察側は、元法相が選挙運動を仕切り、広島県議、市議、元首長ら100人に現金を配ったとする大規模な買収事件の構図を描いた。案里議員は、うち5人への供与で共謀したとして起訴された。

 争点となったのは、地元議員らに渡した現金の趣旨だった。検察側は地元議員らの証言を基に「票の取りまとめの報酬だった」とし、案里議員は「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」として無罪を主張した。

 だが、金の配布は参院選の直前が多く、県議選など同年4月の統一地方選と無関係の議員にも提供されていた。判決がそうした状況を踏まえて、買収だったと判断したのは妥当だろう。

 一方、検察の捜査手法に対しては疑問の声もある。買収と知りつつ金を受け取る行為は禁じられているが、地元議員らの立件は見送られた。クリーンな選挙を求める有権者には割り切れなさも残ろう。

 判決は、克行元法相に関して現金供与の全体を計画したと認定した。案里被告とは別に続けられている元法相の審理にも影響しそうだ。

 夫妻は、疑惑浮上後も有権者にきちんと説明することのないまま議員の座に座り続けてきた。判決を受け、野党のみならず、与党の公明党からも案里議員に辞職を求める声が上がっている。有罪が確定すれば失職するが、それを待つまでもなく、自ら身を処すべきである。

 自民党の責任も重い。参院選では党本部主導で新人の案里議員を擁立した。陣営には党本部から1億5千万円の資金が渡されたが、同じ選挙区の自民現職陣営の10倍という破格の支援だった。

 潤沢な資金の存在が、大規模な買収につながった可能性もあろう。党として頬かむりをしたまま済ませるのでなく、資金の流れなどを調査し、明らかにするのが筋だ。

 政治とカネを巡る不祥事は依然として後を絶たない。先週は、鶏卵生産大手グループの元代表から500万円を受領したとして吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された。河井夫妻の買収事件の捜査で押収された資料などが端緒となったものだ。

 今回の判決を受け、菅義偉首相は「政治家は疑念を抱かれないよう、襟を正して活動していくことが大事だ」と述べたが、危機感は伝わってこない。一政治家の責任にのみ帰して済ませるような姿勢では国民の不信感は拭えない。

(2021年01月23日 08時00分 更新)

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