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よみがえる“名人”の真剣勝負 倉敷の記念館に「封じ手」展示

倉敷市大山名人記念館に寄贈された名人直筆の封じ手。中央の「歩」を動かすよう矢印が入っている
倉敷市大山名人記念館に寄贈された名人直筆の封じ手。中央の「歩」を動かすよう矢印が入っている
大山康晴15世名人
大山康晴15世名人
 将棋の大山康晴15世名人(1923~92年)が、57年前のタイトル戦で記した「封じ手」が、故郷・倉敷市の将棋愛好者から同市大山名人記念館(同市中央)に贈られ、展示されている。“昭和の巨人”の真剣勝負の一端を伝える貴重な資料として注目される。

 封じ手は2日制の対局で、初日を終えて中断する際、次に指す番の棋士が決めた指し手を用紙に記入して封印し、翌朝の対局再開時に開封する。寄贈されたのは、大山名人と兄弟子で終生のライバルだった升田幸三・九段(実力制4代名人、18~91年)が争った、第2期十段戦(竜王戦の前身)の第6局(63年12月)のもの。十段タイトルの保持者だった後手番の大山名人が、44手目を「(4五)同歩」と封じた。

 43手目までの盤面を再現した20センチ四方ほどの用紙に、指し手が赤鉛筆で矢印として記入されている。「大山十段封じ手」と記された簡素な封筒には、封印のサインも残る。

 升田九段についての著書がある元将棋観戦記者の東公平氏が保管していたが、大阪市内の愛好者を通してチクバ外科・胃腸科・肛門科病院名誉院長の瀧上隆夫さん(69)=倉敷市=がもらい受け、昨年11月の第28期大山名人杯倉敷藤花戦3番勝負に合わせて寄贈。トレードマークの黒縁眼鏡や、愛用の駒袋とともに展示している。

 日本将棋連盟によると、封じ手は原則2通作り、終局後に立会人と会場になった施設に渡されることが多い。昨年、九州豪雨被災地支援でインターネットオークションに出品された藤井聡太王位・棋聖(18)の王位戦の封じ手は、1500万円で落札された。大山名人の封じ手について同連盟は「半世紀以上前の封じ手がどれほど残っているのか分からないが、タイトル保持者の直筆として貴重なものには間違いない」としている。

 大山名人記念館の北村実館長(87)は「大山名人の全盛期を象徴する一品として大切にしたい。指し手や筆跡を通して名人をより身近に感じてもらえれば」と話している。

(2021年01月19日 19時22分 更新)

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