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阪神大震災26年 風化防ぎ教訓生かしたい

 「自殺や孤独死を防ぐには話し相手になり、置き去りにされていないと感じてもらうことが大切だ」。そうした思いで、阪神大震災の被災者訪問活動に取り組んできた神戸市のNPO法人「よろず相談室」理事長牧秀一さん(70)が高齢のため、3月末で退任し、四半世紀に及んだ活動の第一線から退くという。

 定時制高校の教師だった1995年の震災時、避難所となった自宅近くの小学校でボランティア活動を始めた。仮設住宅などの整備後も被災者を訪ね、家や仕事、家族を失った孤独感に寄り添った。

 歳月とともに、知り合った被災者が亡くなり、街からも痕跡が減る中、「活動の集大成」として先月、被災者の証言集「希望を握りしめて」を出版した。貴重な記録だ。

 阪神大震災からきょうで26年になる。ビルや高速道路が倒壊し、倒れた家屋などの下敷きになった多くの人が命を落とした。惨禍から得た教訓は根付き、どんな課題が残っているのか。これからも検証していく必要がある。

 影を落とすのは、兵庫県でも政府の緊急事態宣言が再発令された新型コロナウイルスである。神戸市の市民グループ「市民による追悼行事を考える会」の先月の発表では、17日前後に県内で予定される追悼行事は昨年より18件少ない42件で、感染拡大で中止になった行事も多いという。

 被災20年の2015年は110件だった。参加者の高齢化や資金難を背景に減少傾向が続いている。震災経験の風化も否めない。

 被災者が移り住んだ災害復興公営住宅では高齢化が進んだ。亡くなる人や転出者が増え、コミュニティーの維持が難しくなっている。

 兵庫県内の復興住宅では昨年、71人の1人暮らしの高齢者らが誰にもみとられずに亡くなった。県警の検視結果を基に共同通信がまとめたものだ。前年より4人減少したが、集計を始めた00年以降で3番目に多く、合計は1243人となった。

 神戸市が毎年1月17日に同市中央区の公園「東遊園地」で開く「追悼の集い」について、記帳所を設置せず、遺族や市長の壇上でのあいさつを取りやめながらも実施するのは、風化にあらがう意味もあろう。兵庫県の「ひょうご安全の日のつどい」や、東遊園地に竹灯籠を並べて犠牲者を追悼する「1・17のつどい」も規模を縮小し開催する。

 同市は「音楽の力で風化を防ぎたい」ときょう、震災直後に作られ国内外の被災地で歌い継がれる追悼の合唱曲「しあわせ運べるように」を二つ目の市歌に指定する。震災後に生まれた世代が記憶を語り継ぐ団体を設立したという心強い動きもある。

 孤独死など阪神大震災で浮上した課題は今後、東日本大震災や西日本豪雨などの被災地で顕在化する恐れがある。教訓を語る声に耳を傾け、生かす努力を続けたい。

(2021年01月17日 08時00分 更新)

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