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選手の「盗撮」被害 卑劣な行為は許されない

 競技中のアスリートが性的な意図で写真や動画を撮影されたり、ひわいな言葉とともに会員制交流サイト(SNS)に投稿されたりする問題が深刻化している。

 これを受け、日本オリンピック委員会(JOC)など7団体が被害根絶に向けて共同声明を出すなど本格的な対策に乗り出した。今後は競技の枠を超えて大会での盗撮防止策、選手の身を守る工夫の共有などに取り組む。

 スポーツ界を長年悩ませてきた問題である。一連の行為を「性的ハラスメント」と位置付け、足並みをそろえて声を上げた意義は大きい。

 女子選手の体の一部をクローズアップした画像などが無断で投稿、売買される被害は20年以上前から続くとされる。機器が発達した近年は盗撮の多発に加え、赤外線カメラで下着が透けるよう撮られるケースや、性的に加工した画像をSNSで拡散されるケースなど悪質化が進む。

 標的となっている選手の若年化も看過できない。被害は中高生や地方大会にまで広がり、男子も含まれる。実態調査のためJOCが昨年11月に設けた特設サイトには、1カ月で300件超の情報が寄せられた。選手の尊厳を守り、競技に専念できる環境づくりを急がねばならない。

 各競技団体も手をこまねいていたわけではない。例えば被害が相次いだフィギュアスケートや体操は場内での観客の撮影を原則禁止。他競技でもスポーツ愛好者の自由な観戦を尊重する一方、撮影を条件付きの許可制にするなど試行錯誤を重ねてきた。

 ただ、こうした対策には限界がある。根本的な解決に至らない要因の一つが法の壁だとされる。

 国内の盗撮行為は現時点では刑法で規定されておらず、都道府県ごとに迷惑防止条例で取り締まるしかないのが実情だ。また、条例が定める「盗撮」は原則、衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為とされ、ユニホームや水着姿の「盗撮」は犯罪に該当しない可能性が高い。

 JOCの要請を受け、スポーツ庁は総務省、法務省などに協力を働きかける方針を示している。法務省の性犯罪に関する刑事法を見直す有識者検討会では「盗撮罪」の創設が論点の一つとなっているが、明確な性犯罪として法整備を進めるべきだろう。

 とはいえネット上での画像拡散も含め法規制の強化には時間がかかる。まずは事態を重く受け止め、社会全体で問題意識を持つことが必要だ。行政も巻き込み、選手らの相談窓口も増やしたい。

 岡山県では、バレーボールV1女子・岡山シーガルズがきょう開催予定のホーム戦から県警と連携し、悪質な撮影へ警戒を強めるという。地域で誰もが安心してスポーツを楽しめるよう、選手やファン、家族を傷つける卑劣な行為は許さないとの機運を高めていくことが大切だ。

(2021年01月16日 08時00分 更新)

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