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核兵器禁止条約 廃絶への足取り強めたい

 核兵器を全面的に違法とする初の国際法「核兵器禁止条約」が22日発効する。廃絶に向けた大きな一歩であり、今年を「核なき世界」実現の新たな出発点にと願う。

 だが、核保有国や「核の傘」に依存する国は条約に背を向けたままだ。核拡散を懸念させる動きもあり、廃絶への道のりは依然険しい。

 禁止条約は、米中ロなど核保有五大国の間で核軍縮が進まないことへの対抗措置的な意味合いがある。そこには広島、長崎の被爆者や世界各地の核実験被害者らの切なる願いが込められている。

 しかし、現実は期待に逆行する動きが目につく。イランが年明け早々、ウランの濃縮度を20%に高める強硬策に出た。2015年に米欧など6カ国とイランが交わした核合意の上限(3・67%)を大幅に上回り、核兵器級のウラン製造を容易にするとされる。国際社会の懸念や非難が高まるのも当然だ。

 核合意を巡っては、トランプ米政権が18年に一方的に離脱。制裁がイラン経済を締め付ける。今回のイランの行動は、核合意に復帰する意向のバイデン次期米大統領から譲歩を引き出し、早期復帰と制裁解除を促す狙いだろう。

 だが、バイデン氏は復帰の前提にイランの合意義務履行を挙げており、強硬策は逆効果だ。敵対するイスラエルの軍事行動も招きかねない。早急な軌道修正を求めたい。米国や参加国も対話による核合意の再構築に努めてほしい。

 北朝鮮の動きも気になる。朝鮮労働党は党大会で金正恩(キムジョンウン)氏を党総書記に選出した。父や祖父と同じ肩書で権威を高め、国内の引き締めを図る狙いがあるのだろう。

 正恩氏は経済不振を認める一方、核・ミサイル開発の成果を誇示した。米国を「最大の主敵」として核戦力を強化すると表明。多様な戦術核兵器を開発し、超大型核弾頭の生産も続けるという。日本の安全保障にも脅威となる。

 とはいえ、北朝鮮も米新政権と対話の道を開きたい思いは強かろう。バイデン氏には対話と圧力で朝鮮半島の非核化を目指してほしい。

 世界には、米ロを中心に依然約1万3千発の核兵器があるとされる。人類の滅亡にもつながるだけに、国際協調で廃絶への足取りを強めたい。

 唯一の戦争被爆国である日本は、率先して取り組むべき立場にある。だが、禁止条約については「核の傘」を提供する米国に配慮して距離を置いている。保有国抜きでは実効性ある取り組みが不可能というのが理由だ。

 といって、事態を動かさなければ、保有国と非保有国の溝が広がり、核兵器の廃絶は遠のくばかりである。被爆者はじめ国内外から失望の声が聞かれる。

 条約発効後に、具体策を検討する締約国会議が開かれる。日本が双方の“橋渡し役”を自任するのならオブザーバー参加を検討すべきだ。

(2021年01月14日 08時00分 更新)

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