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おととしのNHK紅白歌合戦でも…

 おととしのNHK紅白歌合戦でも耳にした、五木ひろしさんとしては異色に思えるラテン調の曲は古希を迎えた本人から「新たなスタートを切りたい」と頼まれた。先に亡くなった作詞家のなかにし礼さんが自著「わが人生に悔いなし」に記している▼「VIVA・LA・VIDA!」との曲名は「人生万歳」といった意味。死の淵を3度逃れたという自らの思いでもあったろう。がんと心臓発作、さらに6歳だった終戦後の旧満州(現中国東北部)からの引き揚げである▼自在に言葉を紡いだなかにしさんとは対照的に、長年帰国できなかった中国残留邦人は、今も日本語が不自由な人が多い。そうした人を支えようと、中国語で対応できるヘルパー事業所を残留邦人3世の女性らが岡山市に開設したと本紙記事で読んだ▼残留邦人のうち、終戦時に子どもだった残留孤児も既に70~80代。だが、介護サービスの利用をためらう人が少なくないそうだ▼「何もかもが許される社会でないと平和とはいえない」と、なかにしさんは時に扇情的に聞く人を揺さぶった。冒頭の歌詞には、こうある。「涙の日々もあったけど/終わり良ければすべて良い」▼残留邦人は日中国交回復後も帰国事業が進まず、祖国でも国の支援は乏しかった。何度も涙をのんだ人たちに「人生万歳」と言える老後を、と願う。

(2021年01月13日 08時00分 更新)

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