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麒麟がくると次はえびす様―。ビ…

 麒麟(きりん)がくると次はえびす様―。ビールのブランド名の話である。幸せをもたらす聖獣を商標にしたキリンは1888(明治21)年の発売。その2年後にヱビスが登場する▼商売繁盛の神様にあやかったものの販売は低迷した。そこでメーカーの再建を託されたのが井原市出身の馬越恭平(1844~1933年)だ。株主の旧三井物産の専務だった馬越はビール会社でも社長として腕を振るい、業界首位を争うまでに育て上げる▼明治前期は殖産興業で数々の企業が生まれた。ビール業界は新規参入が相次ぎ、20世紀に入ると各社は経営体力を消耗し一気に淘汰(とうた)の時を迎える。この難局を乗り切ったのも馬越だった▼昨秋出版された「負けず 小説・東洋のビール王」(幻冬舎)の著者端田晶さんによると、馬越は常識に縛られないアイデアマンだった。放った大胆な一手が業界再編である。現代もブランド名が残る3社の大合併を実現させて自らそのトップに就いた▼馬越と同時代を生きた実業家に渋沢栄一がいる。日本資本主義の父と呼ばれ、馬越とともにビール会社の経営にも携わった。異例の越年放送を経て来月から新たに始まるNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公は渋沢である▼先の見えない激動の時代を切り開いていった先覚の苦労がしのばれる。コロナ禍に揺れる今だからこそ。

(2021年01月11日 08時00分 更新)

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